Chapter/09-2/5-






フリオニールに知られたくないライトニングの気持ちを尊重するとするならば、他の仲間にもできれば知られてはいけない―考えをめぐらせながら、ティファは少し遠回りして、野営地のほうへと歩いていった。
その最中…ふと視線を移せば、ティファにとっては見慣れた姿がそこにある…傷だらけのライトニングを背負ったティファの姿に微かに驚きの表情を浮かべながら駆け寄ってくるクラウドに、ティファは安堵したような落胆したような複雑な表情を浮かべて視線を送った。

「ティファ、これは…ライトニングに何が」
「詳しい話をすると長くなっちゃうから…でも、とりあえずライトはこのことをフリオニールに知られたくないってそう言ってるみたい」

縋るような瞳でクラウドを見上げ、そしてティファは再び歩き始める。
黙ったままその一歩後ろをついてきていたクラウドとの間に会話はない。人ひとり背負ったまま歩き続けるティファにクラウドの表情を窺うほどの余裕はなく、ただ…隣で自分に合わせてゆっくりと歩いているクラウドの気配だけを感じていた。

「テントの外に出てた奴の気は俺が引いておく」
「…えっ?」
「他の仲間に知られると嫌でもフリオニールの耳に入るだろう…俺が気を引いている間に、ここから一番近いテントに入れ。いいな」
「クラウド…」

ティファの呼びかけに答える間もなく、クラウドは早足で野営地の方へと向かって歩き出した。
その背中がなんだか妙に頼もしく思えて、ティファは微かに微笑みを浮かべながら―ライトニングを背負いなおし、野営地のほうへと足を進めていた。
やがて遠巻きに、複数のテントと…その向こう側で、何かを話し合っている仲間達の姿が見える。
仲間達の輪の中心にいたのはクラウド。無口な彼なりに何かを考え、皆にその話をしているらしい―心の中だけで小さくありがとう、と告げて、ティファはライトニングを連れて一番近くにあったテントの中へと足を進めていた。

テントに入るとそこには既にポーションの瓶が置いてあった。クラウドが準備したものだろうと気づいて、ティファは再びありがとうと呟く。
とは言え、余剰のポーションはひずみに向かったウォーリアオブライトたちが持って行ってしまっている。そこにあったポーションは誰かが使いかけて残ったものだったらしくライトニングの傷を全て癒すのには到底足りそうにもない。
ティファは少しだけ考え、目に見える範囲の…腕や脚、顔や首筋に残された傷を選んで慎重にポーションを振りかけてゆく。
荒かった呼吸が落ち着き始め、目に見える範囲の傷は全て消えた―ように、ティファには思える。
少しでも傷が軽くなり、ライトニングが意識を取り戻せばあとは彼女自身が自分でなんとかするだろう。
そしてティファの想像通り…傷が浅くなったライトニングはゆっくりと目を開く。

「…ティファ…?どうして、お前が」
「銃声が聞こえたってクラウドが行ったから気になって様子を見に行ったの…でもびっくりしちゃった、ライトが大怪我して歩いてるから」
「ああ…結局倒れてしまったのか」

苦笑いを浮かべながらライトニングは身体を起こす…まだ治りきっていない傷の痛みでか眉を顰め、ティファは慌てたようにそのライトニングの肩に触れる。

「無理しちゃダメ。使いかけのポーションしか残ってなくて、全部の傷は治せてないから」
「そうか…だがこの程度なら、後は自分でどうにでもする。ありがとう、ティファ。それと」
「大丈夫…フリオニールには言わないから。心配、かけたくないんだよね」

ティファの言葉にライトニングは頷きだけを返す。その表情はどこか暗くはあったが、傷の痛み等に耐えているような雰囲気ではなく―既に、普段のライトニングに近い。
それを確かめると、ティファはぽんぽんとライトニングの肩を叩いて立ち上がる。

「とりあえず、後はゆっくり傷を治して。フリオニールが帰ってきたら上手く言っておくから」

それだけ言い残し、ティファはテントを後にした…ライトニングを心配していないわけではなかったが、今の彼女に何かかけられる言葉があるだろうかと考えた時に今のティファには思い浮かぶ言葉がなかったのだ。


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