Chapter/09-1/5-






森の方から銃声がした気がする、とクラウドに言われ、つい数刻前まで自分たちが見回っていた森の中へと飛び出したティファが見つけたものは…傷だらけで歩いているライトニングの姿。

「ライト…?」

一体何があったというのだろうか、ティファは慌ててライトニングに駆け寄った。
ライトニングは相変わらず、自分の方を見ずにふらふらと歩き続けている―
その身体には数え切れないくらいの傷がつけられ、素肌を曝している手足からは無惨に血が流れ落ちている。それを見たティファの足の動きは自然と早くなっていた。

「ライト!何があったの!?」
「…私は大丈夫…だから…」

その一言を残して、ライトニングはふらりとよろけティファの胸に身体を預けるように倒れこんだ。
抱き起こしたティファの掌に、べっとりと残る紅…ライトニングの傷口から流れ落ちる鮮血を間近でみて、ティファが感じていた驚きと焦りの感情が強くなる…
腕の中で意識を失ったライトニングの目を覚まさせるにも、これだけの傷を負ったライトニングを激しく動かすことは流石に躊躇われて…その分、行き場のない力は言葉の強さとなってライトニングに投げかけられる。

「ライト!しっかりして、ライト!!」
「…戻るまでもたなかった、か」

その声にティファが顔を上げると、そこにいたのはラグナ。
確か、ライトニングはラグナと一緒に見回りをしていたはずだ―そのことを思い出したのか、ライトニングの身体を支えたままティファは眉を微かに上げ、ラグナをしっかりと見据える。
無論、こんなことをしたのはラグナではないだろう。だがその口ぶりから、ラグナが何かを知っているのは明確―それが分かっているからこそ、ティファの口調は自然と厳しくなっていた。

「ねえラグナ、何があったの?ライトはどうしてこんな…」
「アルティミシアに襲われた…だけど、アルティミシアは明確にライト『だけを』狙って来てたみたいだな」
「ライト『だけを』…?」

意味が分からず首をかしげるティファに、ラグナはひとつ大きく頷いてみせる。
一瞬の間、その間ラグナの表情には逡巡が浮かんでいた…ともすればそれは、事をティファに話すことを躊躇っているのかもしれない。
しかしティファの視線は相変わらず揺らぎなくラグナを真っ直ぐに捕らえている。…それで決意したかのように、ラグナの唇からは言葉がは自然と紡がれていった。

「あくまでオレの想像だけど、皇帝ってのはフリオニールを目の上のタンコブだと思ってんだろ?」
「…うん、クラウドがそう言ってた」
「邪魔者をどうにかする為に、その恋人を利用する。いかにも悪い奴が考え付きそうな話だと思わないか?」

ティファの答えはない。だがその沈黙と…噛み締められた唇が、ラグナの言葉への強い肯定を表している。傷の痛みからか荒い呼吸を繰り返すライトニングの身体をしっかり抱き起こしながら、ティファはどこか遠くに視線を送った。
フリオニールがライトニングと離れることを厭ったのは、もしかしたらこうなることを予測していたのかもしれない…今になってそんなことを考え、あの時のフリオニールに対して申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
だからこそ、その視線の先に見慣れている仲間達の姿がないかと探している―

「フリオニールは…まだ帰ってこないのかな」
「もうすぐだとは思うけど…ライトの奴、このことはフリオニールには黙ってろってさ。どんだけ強がってんだか」

首を横に振ったラグナの言葉に、答えが返せない。ライトニングの気持ちは分かるだけに、ティファには答えを返すことが出来ない―
もしも自分がライトニングと同じ立場に立ったら。その時このことをクラウドに話すことが出来るだろうか…答えは、否。
言ってしまうことで無駄な心配をかけてしまうことになる、それならば絶対にクラウドには知られたくない、きっとティファもそう言うだろう。

「ラグナ、暫くひとりで見張りお願いしてていいかな…ライトは私が連れて帰るから」
「元々そのつもりだよ。ライトのこと、任せた」

ラグナの言葉にはしっかりとうなずきを返し、ティファはライトニングの身体を背負って立ち上がった。


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