Chapter/08-4/4-






「…何事!?」
「悪いけどそこまでだ。魔女はほっとけないしそれに…フリオニールがいない間にライトに何かあったなんて知れたら俺たち八つ裂きにされちまう」

マシンガンを担いだ姿勢でその場に現れたラグナに、アルティミシアの表情が歪んだ―彼女を彩るのは、苛立ちと怒り。
アルティミシアは再び無数の矢を魔法で生み出し、ライトニングとラグナに向けて放った。
ラグナは慌てるでもなく、マシンガンのかわりにライフルを構えて引き金に手をかける…放たれた銃弾は一度木の枝に当たって跳ね返ると背後からアルティミシアを狙う。

「くっ…」

その銃弾を辛うじてかわしたアルティミシアではあったが、それで集中が途切れたのかライトニングの周囲で止まっていた時間がゆっくりと流れ始める。
身体が動くことを確かめたライトニングは、素早く体勢を立て直しアルティミシアに剣を向けなおした。
時が止まっていた間に脚に受けた傷からは鮮血が流れ落ち、腕の傷から零れた血は柄から刃を流れて地面に滴り落ちている―しかし、その程度で膝を折るライトニングではない。

「やられた分は返させてもらう…!」

傷の痛みを堪える様に、肩で大きく息をしながらライトニングはアルティミシアに向けて足を踏み出す、が―しかし。

「…不利なまま戦うほど私は愚かではありません。私の標的は貴女『だけ』なのだから」

アルティミシアは再び無数の矢をライトニングとラグナに向けて放つ…それをかわし、受け止めている間に…矢で作られた煙幕の向こう側にいたはずのアルティミシアはその姿を消していた―

「大丈夫か、ライト」
「…この程度、大したことはない。だが…油断していた」
「とりあえず、ライトは一旦向こうに戻るんだ。あとは暫くオレが見張ってるから」

ラグナの言葉にすまない、と短く返してライトニングは傷をかばう様に野営地に向かって歩き始めた―しかし、その最中振り返ってラグナに一言だけ告げる。

「フリオニールには…黙っていて欲しい」
「だけど」
「あいつに偉そうなことを言った私がこのざまでは格好がつかないだろう」

その言葉は半分冗談のようでもあり…あとの半分は紛れもない本音。
間合いを図っているつもりが逆に時を止める好機を探られていた、その結果これだけの深手を負った…それは勿論ライトニングが油断していたこともあるのかもしれない。
だがそれでも―この事実を知ったらフリオニールはきっと自分から離れたことを悔やむだろう。その結果、戦うことを躊躇ってしまうかもしれない―

―俺の知らない間に君に何かがあったら俺は絶対耐えられないと思って、だから―

耳に甦ったフリオニールの言葉に、ライトニングは首を大きく横に振った。
フリオニールにこの傷を悟られるわけには行かない。きっともうすぐ帰ってくるだろう、そのときにこんな姿では―
…誰かが、自分を呼んだ気がする。その声はとても遠いような、すぐ近くにあるような…

「…私は大丈夫…だから…」

呟いた瞬間に―ふらりと自分の身体がよろけたのを感じた。その瞬間に柔らかな感触が身体を抱きとめる。
そう言えば自分の名前を呼んだ声は誰のものだったのだろう。
フリオニールではない、そのくらいしか分からない―そんなことを考えている間に、ライトニングの意識は溶暗していった…


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