Chapter/08-3/4-






「…そもそも、お前の狙いはなんだ」
「あの人の望みを叶える事…それ以上でもそれ以下でもない」
「皇帝の望みを叶える為だけに単身敵陣に乗り込んできたというのか?どうにも信用できないな、そもそも理由が掴めない」

じりじりと間合いを図りあいながら、先に攻撃を仕掛けて隙を見せることもできず…そこに生まれるのは言葉の応酬のみ。
ライトニングの放った言葉を聞き、アルティミシアは鼻で笑ってみせる―馬鹿にされたように感じて、それがライトニングの心につけられた引っ掻き傷を少しずつ深めてゆく。

「愛する者の為なら命だって賭ける―寧ろ、こんな茶番が得意なのは貴女達の方なのではないの?」
「…なるほど、そう言うこと…か」

アルティミシアがひとりでこの場に姿を見せた意味、そしてアルティミシアが皇帝と手を組んだということの意味がどうにも理解できなかったライトニングの中で全てがひとつに繋がる―
だが、繋がったところでそれが理解できるかと言えばそんなわけもなく―次の言葉をライトニングが探している間に、アルティミシアが先に言葉を投げかける。

「そして愛する者が何かを恐れるならその脅威を払ってみせる―貴女になら理解できると思ったのだけれど私の勘違いだったのかしら」
「理解は出来るが共感はしない…そもそも、世界の支配なんて事に共感できるわけがないだろう」

隙を見せないアルティミシアに対して、ライトニングの声にも次第に苛立ちが浮かんでくる―その声を聞くだけでアルティミシアが浮かべる余裕ぶった微笑みがライトニングの心に爪を立てる。
踏み込むにもあと一歩何かが足りない。あと一歩分の余裕がない今、うかつに踏み込むのは危険だと…戦士としてのライトニングの本能が告げている。
それが余計に苛立ちを深め、その苛立ちがアルティミシアの見せる余裕を厭い、更なる苛立ちをライトニングに与える。
悪循環だと頭では分かっていても、どうしても感情がついてこない。
ライトニングの苛立ちを見抜いたかのようにアルティミシアは言葉を繋ぐ―

「もしもその力があるのなら、そしてあの坊やが望むなら…あなたもきっと私と同じことをする。違うかしら」
「…お前と私を一緒にするな」

冷静でいようとしているのに、無意識に強くなる語調。
自分の中を静かな怒りが支配しているのを感じて…この調子ではいけないと、思っていてもそれでも止まらないライトニングの言葉…

「私はフリオニールを愛している…だからこそ、あいつが誤った望みを抱くのなら正しい道に導く。あいつに道を踏み外させることなどできない」
「それはただの自己満足でしょう」
「お前から見たら自己満足かもしれないが―私はあいつを愛していることを誇れるように、そしてあいつが私を愛していることを誇れるように生きる。それだけの話だ」

半歩近づけば半歩下がる…距離を詰めたくともそれが叶わない、今の状況を打破するのに必要なものがなんなのかがライトニングには掴めない。
ただただ感じる、アルティミシアの余裕…一体何が彼女をこんなに強気でいさせるというのだろうか、ライトニングはそれを図りかねてあと一歩をつめることが出来なくて。

「哀れね。そんな儚い自尊心が何になるというの?」
「哀れなのはどっちだろうな。お前の感情は愛じゃない…ただの同情だ」
「なんとでも言うがいい…貴女は所詮、道具に過ぎないのだから」

アルティミシアのその言葉と同時に、ライトニングの周囲の風景がぐにゃりと歪む―!!

「しまっ…」

その先は言葉にならない―ライトニングの周囲の時間が、ゆっくりと止まる―

「…手のかかる小娘だこと…命までは取らないから安心して眠っていなさい」

アルティミシアは余裕の表情を浮かべながら、動きを止めたライトニングの周囲に魔法の矢をばら撒く。その矢の先は全てライトニングへと向かっている…
余裕の微笑みを浮かべたまま、アルティミシアはゆっくりと手を翳した…その動きに従って、無数の矢がライトニングを襲う―!!
―その刹那響き渡る銃声、アルティミシアの翳した手に、銃弾が掠めた。


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