Chapter/07-3/5-






「…随分行儀のいいイミテーションもいたもんだな」
「行儀がいいんじゃない、躾が行き届いてるんだ」

ジェクトの不思議そうな一言にはスコールが短くそう返し、その言葉で意味が分からなかったのかジェクトは首を傾げている。
なんだかそれがジェクトには不似合いに思えて、フリオニールに小さな笑みが浮かんだ。無論ジェクトはこのひずみの奥にいる人物のことを知らないから、その説明では全く持って意味が分からないのであろうが。

「これだけのイミテーションを統率できる力を持った者がこのひずみの奥にいる…そう言うこと、か」
「だけど、逆に考えたら…皇帝も同じことをしようとしている。それだけ、奴らの力が強大になる可能性が高いってことなんだ」

先ほど浮かんだ笑みはどこへやら。ゴルベーザの言葉に答えたフリオニールは小さく唇を噛んだ―思い出したのは、元の世界にいたときのこと。
強大な軍事力を持って自分の故郷を、民を、そして家族や仲間までも蹂躙した皇帝の暴挙を思い出した―いっそ覚えていなければと何度願ったか分からない、そんな記憶。
しかし今はそんな記憶に捕らわれている場合ではない。フリオニールは何かを振り払うように小さく首を振り、そのまま正面を見据えた…
いくつめかの烙印をウォーリアオブライトが破壊する。もう、どれほど進んだだろうか…自分たちでもそろそろ分からなくなりかけていた頃。
そしてその先に開けた空間に…ふたつの、大きいとは言えない人影が見えた。
2つの人影のより小さな方―シャントットは彼らの気配を感じたのかゆっくりと振り返り、ウォーリアオブライトの顔を見ると一瞬だけ驚いたような顔を浮かべ、そして余裕ありげな笑みを彼らに向けた。

「…貴方達の方から出向いてくるとは、珍しいこともあるものですわね」

シャントットのその声に呼応したかのように、シャントットの隣あたりにしゃがみ込んでいたプリッシュも顔を上げ―見慣れない顔、ジェクトとゴルベーザを不思議そうに見遣りながらも見知った3つの顔を見ると楽しそうにも嬉しそうにも見えるように顔を綻ばせる。
その2人に真っ直ぐに視線を送り、ウォーリアオブライトの凛とした声が―ひずみの奥だというのに不思議と明るいその空間に響き渡った。

「あなたに聞いてもらいたい話がある」
「なあ、それ俺も聞いていいか?」
「ああ…叶うならば君の力も借りたい」

頷きと共に返された言葉に、プリッシュは楽しそうに笑うとウォーリアオブライトの正面まで駆け寄ってその顔を見上げている。
ちらりとその顔に一瞥を送り、それから再びシャントットに視線を移したウォーリアオブライト…その口が開こうとしたところで、シャントットの視線はウォーリアオブライトの隣に控えていたジェクトとゴルベーザの元に移る。

「…ところで。見慣れない顔がありますわね…随分と不思議な存在のように感じますけれど」
「彼らはかつて混沌の神に仕えていた者だ。だが今彼らは我々とは敵対していない」
「カオスの戦士なのに敵対してねえって、どういうことだ?」

話の流れが理解できていないらしきプリッシュに、ゴルベーザが兜の奥からちらりと視線を送る―そして、最大の礼を尽くすかのように真っ直ぐに見つめ返した。

「同じカオスの戦士だったものがこの世界の支配を目論んでいる。我々はそれに逆らった―我々の他にもう1人、元々カオスに与していた者が彼らと一緒に行動している」
「んー…つまり、カオスの戦士が仲間割れした、って話でいいのか?」
「分かりやすく言やあそうなるな」

ジェクトの答えを聞いたプリッシュはそこで納得したように大きく頷き、そして再びウォーリアオブライトを見上げる。話の続きを促すかのように。
そして、ウォーリアオブライトに視線を送ったのはシャントットもまた同じ。


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