Chapter/07-2/5-






「フリオニールの気持ちも分かるけど、大丈夫。フリオニール達がいない間もみんながいる」
「…ティファ」
「私たち仲間でしょ?私たちを信じて」

ライトニングの背中に掌を添え、ティファはいつもの天真爛漫な笑顔をフリオニールの方に向けた。
ティファの言葉に呼応するかのようにライトニングが深く頷いてみせ、空色の瞳が真剣な眼差しをフリオニールに向ける。
行って来い。その瞳は何よりも強く、そう語っていた。
ふと気づけばティファだけでなく、他の仲間達も皆同じように2人を見ている。
そんな中、一歩足を踏み出したのはラグナ。

「そりゃ、ライトのことが気がかりな気持ちは分かるさ。でもな、それならそうとちゃっちゃと役目を果たして無事に戻ってきて、それからじーっくりライトを守ればいい」

言葉の終わりにラグナは冗談めかしてフリオニールに向けてウィンクしてみせる。
あまりにいつも通りの、緊張感がなさそうでいて…それでいて的確に仲間達の心を見据えたラグナの一言にフリオニールはひとつ大きく頷いた。

「分かったらよろしい。それになフリオニール君、男には戦わなきゃいけない時ってもんがあるんだ。今がその時なんじゃないかな?なんて、オジサン思う訳だけど」
「ああ。ラグナ、ティファ…ライトのこと、頼む」
「任せといて」

自信ありげに胸を張り、掌で自分の胸を叩いて見せたティファ…その衝撃にティファの豊かな胸がたゆんと揺れ、フリオニールはなんだか見てはいけないものを見てしまったような妙な気分のままそちらから目を逸らす。
一連の動きを見ていたライトニングが浮かべていた苦笑いの意味は考えないことにして、フリオニールもまた身支度を整える為にテントの方へと足を向けた―


「では、私たちが留守の間をよろしく頼む」
「任せておいて。兄さんのこと、よろしく」

見送る仲間達にかけられたウォーリアオブライトの言葉に、代表して答えたセシル―そのやり取りに全員がひとつ大きく頷きあって、ウォーリアオブライトを先頭に5人は目的のひずみを目指して歩き出した。
始めは皆が無言ではあったが、口火を切ったのはジェクト。

「で?一体どこへ行こうってんだ?」
「我々に協力してくれるかもしれない者達がいる…あくまで協力が得られるかもしれない、と言うだけの話だが、仲間は多いに越したことはないだろう」
「…皇帝たちがイミテーションを支配下に置こうとしているのであれば確かに、戦力は多いに越したことはあるまいな」

ウォーリアオブライトの言葉に答えたのはゴルベーザ。その答えには無言で頷きだけを返し、ウォーリアオブライトは言葉を放つことなく歩いてゆく。
3人のやり取りを一歩後ろから見ていたフリオニールとスコールは互いに目を見合わせ、小さくひとつ頷きあう―彼らにも、ウォーリアオブライトの向かう先の想像がついているだけにそれ以上の言葉は必要ないのかもしれなかった。
幸いにしてイミテーションなどと遭遇することもなく、ウォーリアオブライトはひとつのひずみの前に立つ。中に入ったことがないものであってもそれなりに深いものであると想像できるそのひずみに、ウォーリアオブライトは何の迷いもなく足を踏み入れた。
勿論それに逆らうものはない。ジェクトが、ゴルベーザが、スコールが順番に足を進める。
最後尾にいたフリオニールは一度だけ振り返る―そして、もはや見て取ることなどできるわけがない野営地の方へと視線を向ける。

―何も起こったり、しない…よな…

心の中だけでその言葉を止め、フリオニールもすぐに他の仲間達を追ってひずみの中へと足を進めた。

ひずみの中にいるイミテーションは、ここ暫くの間に彼らが出会ったものとは違い―近づかなければ襲ってくることもない、随分と「大人しい」ものだった。
それは偏に、ここにいるイミテーションがこのひずみの「主」に―人に邪魔されず、このひずみの中にこもっている「彼女」によって飼いならされた存在であることを物語っている。
術法に長けた彼女のこと、そのくらいのことは容易に成し遂げるだろう―言葉には出さないが、「彼女」と対面したことのある3人はそのように考えていた。
無論、行く末を阻むイミテーションとは戦わなければならないがさほど苦労するでもなく打ち倒し、彼らはひたすらに先へと進む―混沌の神に仕えていたが故にそのことを知らない2人は随分と不思議そうな様子でそのイミテーションを見遣っている。


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