Chapter/07-1/5-






クジャと同行することを決めたその夜は、事情を知っていた者たちがそれぞれのテントで今までに起こったことをクジャの口から聞いて初めて知った仲間達に説明するのにそれぞれ苦心していたようだった。
知っていた者たちの想像通り、何故黙っていたとか水臭いとかそれぞれに文句は言われながらも最終的には仲間達全員が…皇帝の支配に立ち向かう意思を固めた―そんな夜は、その他には特に何も起こらずに静かに更けていった。
そして決して清々しいとは言い切れないが朝を迎えた一行は野営地の中心部分に呼び集められる。
全員が揃ったのを確認してから、とあるひずみに向かうと言い出したのはウォーリアオブライトだった。

「この状況で力を貸してもらえるかどうか…それは分からないが、会うだけ会いに行ってみる価値はあるかもしれない」

彼がそのように言う相手が誰なのか、仲間達の一部にはおぼろげながら想像がついている。しかし、ウォーリアオブライトはそれをはっきりと口に出すことはなく。
現在が非常時であることは分かっている為、皆リーダーであるウォーリアオブライトに逆らうことはない。元より表立って逆らうようなことを言うものはあまり存在してはいなかったが。

「しかし全員で向かうわけには行くまい。私の他にあと4人、と言ったところだろうな」

そう言って一座を見渡したウォーリアオブライトは少しの間を置き、ひとりずつ名を呼びながらその方向を見る―

「ゴルベーザとジェクト。それに、フリオニールとスコール…それと私。この5人で向かうこととしよう」
「…あの」

ウォーリアオブライトの言葉を止めるようにフリオニールが一言呟き…全員の視線がフリオニールに注がれる。
まさか全員の視線が集まってくるとは思っていなかったのだろう、フリオニールは自分に突き刺さる視線に耐え切れなくなったのかそこで目を伏せた。

「どうしたんだフリオニール?」
「いや…なんでもない」

目を伏せたままフリオニールは首を振り、顔を上げた―その視線の先に一瞬だけライトニングの姿を捉え、そして再びウォーリアオブライトの方を見る。
側にいろと、守ると言ったのは自分だが…しかしウォーリアオブライトの言うことに逆らう気になるわけでもなく…
一瞬はそのフリオニールの様子を訝しげに見遣ったウォーリアオブライトではあったが、なんでもないという言葉を受け容れたのかひとつ頷いた。

「すぐに準備をするように。準備が出来次第向かうものとする―他のものは、敵襲に備えて自衛を怠らぬよう」

全員にそう言い渡し、ウォーリアオブライト自身もまた一行に背を向けてひとつのテントの中へと姿を消した―それを皮切りに、他の仲間達も三々五々その場所から散開し始める。
そして、ウォーリアオブライトが立ち去ったのを確認すると、フリオニールは再びライトニングの方に視線を向ける。
どう切り出したものか、フリオニールが逡巡している間にライトニングがフリオニールの方へと先に足を向けた。

「…私のことなら心配するな。お前が帰って来るまでの間くらい、自分の身は自分で守れる」
「でも俺…」
「じゃあ、あいつに逆らってここに残るか?」

ともすれば厳しくも聞こえるような声でそう訊ねたライトニングに対してフリオニールは首を横に振ってみせた。
ライトニングがわざと冷たい口調でそう言った理由を、フリオニールはしっかりと理解している。
今の自分はライトニングの恋人である以前に、皇帝の支配に立ち向かうひとりの戦士なのだ。それも、ここにいる中で一番強い皇帝との因縁を持っている。その自分が躊躇っていていいはずがない、ライトニングはそう言いたいのだろう―
だが、頭では理解できても感情がついてこないのもまた事実で、フリオニールはぐっと右手を握り締める。

「…おかしいよな。皇帝と戦わないといけないって、頭では分かってるのに…君を守りたいって、そう考えたら…ライトとほんの一瞬でも離れたくなくて」
「しっかりしろ。私はそんな弱い男を愛した覚えはない」

わざと突き放すように言われたその言葉…しかし、ライトニングの表情には微かな笑みさえ浮かんでいて。
冷たい言葉に反して、安心させるかのようにフリオニールの肩に置かれたライトニングの手は力強く、そして暖かく…

「はいはい、そこで絶賛ラブシーン中のお2人さん」

冗談めかしてそう言いながら、2人の間にティファが割って入る。
その言葉にフリオニールは微かに顔を赤らめ、ライトニングは苦笑いを浮かべながらティファの方を見た。


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