Chapter/06-3/4-






「君たち…こんなところで何を」
「多分、お前と同じこと考えてんだろうよ」
「よりによって君と考えることが一緒になるなんて思っていなかったよ、ジェクト」

ふん、と鼻で笑いながらクジャは立ち上がる。そしてウォーリアオブライト、ジェクト、ゴルベーザの順番に視線を移し、そしてもう一度ウォーリアオブライトの方へと真っ直ぐに視線を送る。
今度は、クジャから見上げられる形になったウォーリアオブライトの視線がジェクトとゴルベーザを順に移り…その口がゆっくりと開かれた。

「仲間達に今起こっている事を話したい―だがその前に、君が今置かれている状況を聞かせてもらおうか」
「君に話す筋合いはない…と言いたいところだけれど」

クジャの視線は再びウォーリアオブライトから逸らされ、移る先はジタン―ジタンは真っ直ぐにクジャを見据えている。
それを確かめるとクジャは微かに微笑みを浮かべ―そして、ウォーリアオブライトを再び見上げた。

「…僕が話すことによって最終的に、僕がジタンに対して作った借りを返すことに繋がるのなら話すのはやぶさかではないよ」

その言葉と共に芝居がかった動きでクジャの掌が翳される。
先ほどまで傷つき弱っていたのとは別人のようなその動き―あまりにも分かりやすくて、一行からは逆に苦笑いすら漏れる。しかしそんな中でも、ウォーリアオブライトとジタンはそのクジャの姿をじっと見つめていた。

「さっきもジタンに話したけど僕はアルティミシアに襲われた…皇帝の支配への協力を拒んだが故に、ね」

翳された掌がぐっ、と握られる…その華奢な掌で何かを握りつぶそうとしているかのように…彼らには、見えた。
皇帝の支配、と言う言葉にはその事実を知らない仲間達の間からどよめきが起こるがクジャはそれすら気にしていないように見える。
その動きも口調も芝居がかっていて、かつてその所作に馬鹿にされたようにすら感じて腹立たしく思ったものも中にはいただろう。だがそれでも皆がクジャの言葉に耳を傾けている…

「連中は壊れたイミテーションを修復して使役し、駒として使おうとしている…あいつは、皇帝はカオスとコスモスのいないこの世界で新しい神になるつもりのようだね」
「…我々を襲ったイミテーションはそれか」

ゴルベーザがぽつりと呟き、その言葉にいつしか仲間達にまぎれて話を聞いていたカインが意を得たというかのようにひとつ頷く。
ゴルベーザのその言葉に答えるでもなく、クジャの話は更に続いた。

「イミテーションを修復しているのはエクスデス、皇帝たちが使役できるよう術をかけているのがケフカ…そして、皇帝の意思を受けて直接動いているのがアルティミシア。そして僕はその誰にも従う気はない」

握られた掌が解かれ、その指先がウォーリアオブライトを指し示す―クジャの表情に浮かんだ笑顔はこのような状況であるというにも拘らずどこか楽しそうにさえ見える…
クジャの笑顔に、背中にうそ寒いものが走った者もいたかもしれない。楽しそうに見えるその笑顔はどこか…残酷ささえ秘めていたから。

「僕はもう誰かの為に歌うなんてこりごりなんだ。僕が歌うのは僕のためだけに…その歌を聴いて君たちがどう思うかまでは僕の知ったことじゃない」
「遠回しな言い方をしているが…我々と敵対するつもりはない、と言うことでいいんだな」
「言っただろう、僕は僕のためだけに―ただ僕を敵に回したことを皇帝とアルティミシアに後悔させるために歌う、ただそれだけのことさ」

ひらり、クジャのボレロの裾が舞う。その笑顔はどこか残酷で、妖艶ですらあって―だがそこに、今目の前にいる秩序の神の戦士達に対する敵意は一切感じられない。
それが見抜けないほどウォーリアオブライトも頭が悪いわけではなく。クジャの言葉に、ただ無言でうなずきを返すだけだった。

「で?お前も一緒に来るって事でいいんだよな?」

クジャの話を聞き終えたジタンは、クジャを見上げたままいつもの勝気な笑みを浮かべている。
その笑顔を一瞥すると、クジャはひとつ息を吐いて…ウォーリアオブライトに向けていた手のひらをジタンに向ける。

「僕は君への借りを返さなきゃいけないからね」
「…素直じゃねえな」

ジタンの表情に浮かんだ微笑みからクジャは目を反らす。そして、ウォーリアオブライトのほうへ再び視線を移した。

「僕から話せることはここまでだ。後は君たちで好きに話し合えばいい」
「…ああ。情報、感謝する」

そしてウォーリアオブライトの視線がクジャから仲間達へと移った。
いつもの彼の、良く通る凛とした声がその場に響き渡る―

「今の話で概要は分かったかもしれないが、詳しく聞きたいものには個別に私から説明しよう」
「…あの」

ウォーリアオブライトの声に反応したかのように、ティナが一歩足を踏み出した。
その表情はどこか悲壮な決意すら感じさせる―いつものティナとはどこか違うその表情に、仲間達は皆一様にティナの方を見る。


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