Chapter/06-2/4-






「…クジャ!」

駆け寄ってきたジタンは、先ほどまでスコールが助け起こしていたクジャのもとへと足を進めるとスコールを押しのけるようにしてその身体を助け起こす。
ジタンの慌てようや声に釣られたのか、仲間達も続々とその現場に集まってきている…これはますます誤魔化すのに骨が折れそうだ、心の中だけでスコールは考えていた。

「ジタン…無事だったか…」
「どう見てもお前が一番無事じゃねえだろ!」

言葉尻だけ捕らえれば冗談のようなやり取りだが、ジタンの表情は真剣そのものだしクジャは苦しげに眉をゆがめるだけで。
クジャのその表情にジタンの表情に浮かんだ焦りの色が強くなる。

「おい!しっかりしろクジャ!誰にやられたんだ!」
「…アルティミシア…」

クジャの口から出た答えはある意味スコールにとっては予想通りのものだったとは言え、スコールは何故だか今のジタンとクジャの方を見ることが出来なくなっていて―
視線を反らしたスコールを捕らえていたのは全く別の方向から向けられていた視線。

「スコール。もう一度聞く…お前、何か知ってるだろう」

クラウドのその一言が何故か妙に疎ましいものに思えて、スコールは小さく舌打ちした。
そしてクラウドのその言葉に呼応したかのようにジタンが顔を上げる―その表情はいつもの彼らしくなく、どこか厳しい…

「スコール…それ、ほんとか?何か知ってるんだったら…!」
「…俺は…」
「スコール…いいよ、話していいと思う」

その声のしたほうに顔を向けるとそこに立っているのは…フリオニール。
彼は勿論おぼろげながらも事情を分かっているわけで、その彼が話していいと思うなんて事を簡単に口にしたことがスコールには理解できない。
口止めされているのはフリオニールだって同じのはずなのに何故簡単にそんなことが言えるのか…その問いかけが為されるまでもなく、フリオニールの言葉は更に続いた。

「あの人が言ってた…次に何かあったら皆にも話すつもりだ、って」
「…だが」
「…多分もう、知ってる俺たちだけで食い止められる問題じゃなくなってる。クジャのこともそうだし…」

そこで、フリオニールは一度視線を伏せた。そして伏せられた視線はその次に、彼の隣に立つライトニングの方へちらりとだけ送られる。

「それに…ライトだって」
「私は寧ろ望んで巻き込まれたんだ。そんな顔をするな、フリオニール」
「なんだか良く分かんねえけど」

ジタンの視線はいつの間にかスコールから離れ、フリオニールとライトニングの方を捕らえている。
少しだけいつもの彼らしい勝気な笑みが口元に浮かび、そしてそのまま…スコールの方へその視線が戻ってきた。

「お前やクジャに何かが起こってんだったらオレだって望んで巻き込まれてやるよ。だから…話してくれねえかな、スコール」
「…ジタン」
「一体何の騒ぎだ」

人が集まっているのを見て取ったのか、いつの間にかそこにはウォーリアオブライトの姿があった。
何があった、と口調では訊ねているが、その視線ははっきりと倒れたクジャを捕らえている―それだけで、彼はきっと何があったのか推測できていることだろう。

「…余剰のポーションはあるか」
「今バッツが取りに行ってる」

スコールの答えにウォーリアオブライトがひとつ頷いたところで丁度足音が聞こえてくる―足音の主はバッツ。
その手にはポーションの瓶がしっかりと握られている。そして、ジタンの姿を確認したのか…バッツは、手にしたポーションの瓶を振りかぶってジタンの方へと放り投げた。

「バカお前、割れ物投げるな!」

口では文句を言いながらもその瓶をしっかりと受け止め、ジタンはクジャにそのポーションを振りかけた…むき出しの素肌に生々しく刻まれていた傷が次第に薄らいでゆく。
それと共に、苦しそうな表情を浮かべたままだったクジャの表情にも幾分の余裕が戻ってくる。傷の痛みが消えたからだろうか、クジャは掌で己の顔を覆い、ひとつ大きく息を吐いた。

「…また君に助けられた、か。なんだか借りばかりがどんどん増えていく気がするよ」
「バカ、最初っからオレを頼ってここに来たんだろ?借りとか気にすんな、他の奴はともかくオレは元の世界に還ってからでも返してもらえんだからさ」
「元の世界に還った僕に、そこまで時間が残されているとも思えないんだけれど…ね」

悲しそうな表情を浮かべたクジャを力づけるようににぃっとクジャに笑いかけたジタンだったが、すぐに表情を引き締めていつしか自分の傍らに立っていたウォーリアオブライトを見上げる。
どういうことか説明しろ、その視線は雄弁にそう物語っていた。

「…ゴルベーザとジェクトはどこにいる?」

ウォーリアオブライトのその言葉に呼応したかのように、クジャの眉がぴくりと上がる―かつて共に混沌の神に使役されていた者達の名をここで聞くとは思っていなかったのだろう。
そしてウォーリアオブライトの呼びかけた声に答えるかのように、まずはジェクトが、そしてゴルベーザがウォーリアオブライトの元へと足を進める。


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