Chapter/06-1/4-






フリオニールとライトニングが仲間達から離れ、今起こっている出来事についての話をしていた頃―野営地の中心部。

「…最近、みんなの様子がおかしいような気がするの」
「様子がおかしい?そうか?」
「ゴルベーザやジェクトが合流したことで雰囲気が変わったって言うのは当然あるだろうけど…ティナが言いたいのはそう言うことじゃないんだよね、きっと」

ティナとヴァン、それにオニオンナイトの3人がそんなことを言っているのをスコールは聞くともなく聞いていた。
無論スコール自身は知っている。ティナが感じていると言う違和感の正体…仲間達にまだ言えない、今自分たちを取り巻いている「陰謀」のことを。
口止めされている以上自分からそれを仲間に話したりするつもりは当然ないのだが、仲間達がこうして違和感を感じている以上いつまで隠し通せるか分かったものじゃない…
3人の会話に対してぼんやりとそんなことを考えながらスコールはただぼんやりと虚空を見つめていた。
それに、違和感を感じているのはきっとティナだけではなく…

「…おい」

短く声をかけられ、スコールはそちらに視線を移す。
腕組みをしたままそこに立っていたのはクラウドで、スコールは視線だけを送りはしたものの取り立てて返事はしない。
クラウドのほうもその反応は予測していたのか、それを咎める様子もなく…続いたのは、短い言葉。

「お前、何か…」

そこでクラウドは言葉を止める。
だが、彼が何を言いたいのかが推測できないほどスコールは頭が悪いわけではない。それに対してスコールは短く、一言だけ返事を返した。

「…さぁ、な」

何故クラウドがスコールに聞こうと思ったのかは定かではない。だが、クラウドの「選択」は間違っていたわけではない。
だがだからこそ、それに対して答えを返すことは―それが正しいと認めることはスコールには出来ない。
その答えにクラウドは短く息を吐く―ともすれば彼自身スコールのこの答えを予測していたのかもしれない、そんなことをぼんやりと考えながらスコールは再びクラウドから視線を外した。

「…って言うか…会話が成立してんだかしてないんだか良く分からないよ、お前たち」

その様子を端から眺めていたバッツが苦笑い交じりにぽつりと呟いたのは無理のないことなのかもしれなかった。
ただそんな会話だけで終わっていれば、いつもの通りの平和な野営地だった…にも拘らず。
そんな会話の中、聞こえてきた足音。誰からともなくそちらに視線を送り…そこにあった姿を見て、最初に声を出したのは―ティナ、だった。

「あなたは…それよりも、その怪我…!」
「…ジタン、を…呼んで…」

荒い呼吸の中、搾り出すようにそれだけ言うと、足音の主…全身に酷い傷を負ったクジャはばったりとその場に倒れ伏した。
良く見ればまだ傷をつけられてから時間がさほど経過していないのか、クジャがつけたのであろう足跡の上に重なるように血痕が残されている―間違いなく、その血を流したのはクジャ。
手当てを急がなければならないだろうが、彼がこの状況下でジタンを呼ぶとなると…それに、スコールの推測が正しかったとしたらクジャが何故こんなに傷ついているのかの「理由」は…たったひとつ。
相当の深手を負っているらしきクジャの方に歩み寄り、その身体を助け起こしながらスコールはバッツのほうへと視線を送る。

「ジタンを呼んで来い。ついでにポーションを」
「あ、ああ」

スコールの言葉に短くそう答えたバッツが駆け出して行った背中を見送りながら、スコールは考えていた。
恐らく、クジャを傷つけたのは…皇帝たちの一派だろう、と。
しかし事を他の仲間に伝えるなと言われている以上、それをどう説明すればジタンは納得するだろうかと―無論何も話さずにいられるのならそれでいいのかもしれなかったが、クジャはジタンにとっては兄のような存在である。
そのクジャがこれだけ傷ついた姿で現れたとなると、きっとジタンは簡単には納得しない―自分には、事の真相を伏せたままジタンを納得させるような器用な真似はきっと出来ない。
ジタンと一緒にいる時間が長いだけに、ジタンの性格はある程度理解しているつもりだ…そして、そのスコールの考えを裏付けるかのように、響いてきた足音に視線を送るととてつもない勢いでこちらに走ってくるジタンの姿が見えた。


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