Chapter/05-3/4-






その言葉に呼応してライトニングの表情が変わる…微かにその眉が上がるのを見て取ったフリオニールはそれ以上ライトニングを見ることが出来ない。
視線を外したまま…これを言えば怒られるだろうなと言うのは容易に想像できたが、それでも言わなければならないことではあって。

「正直に言えば俺は…何も言わないで君から離れようと思っていた。そうすれば、ライトを絶対に巻き込まずに済むって」

ライトニングの答えはない。視線を外してしまった今ライトニングが浮かべている表情すらフリオニールは見ることが出来ない。
それでも言葉を止めると言う選択肢は今のフリオニールには存在しない―

「だけど、セシルやティーダに言われて気がついた。もしも俺が君から離れてしまったとして、俺の知らない間に君に何かがあったら俺は絶対耐えられないと思って、だから」
「フリオニール」

黙って話を聞いていたライトニングがそこでフリオニールの名前を呼ぶ。呼応したように、フリオニールは顔を上げた…
ライトニングの表情はフリオニールの予想通り、決して薄くはない怒りに彩られている。

「あの、ライト」
「何も言わなくていい…歯を食いしばれ」

拒否は許さない、ライトニングの鋭い視線ははっきりとフリオニールにそう告げている。
フリオニールはライトニングに言われるがまま歯を食いしばり、目をぎゅっと閉じた。
そのフリオニールに向かって、ライトニングは腕を振り上げその掌がフリオニールの頬を打つ―だがそれはフリオニールが想像していたような強さではなく、微かに音は鳴ったものの痛みすらろくに与えない程度のもので。
目を開けたフリオニールの瞳に映ったのは、怒りと哀しみが綯い交ぜになったような瞳でフリオニールを見上げているライトニングの空色の瞳。

「私が何故怒っているか分かるか?」
「…俺が黙ってたから…それと、黙って君から離れようとしたから」
「半分正解だがそれだけじゃない」

ライトニングはひとつ息を吐くと、先ほど自分で打ったフリオニールの頬を包み込むようにその手を伸ばす。そして、もう片方の手も同様にフリオニールの頬に触れる…
まっすぐに視線がぶつかり合い、そして押しとどめていた感情の全てを吐露するかのようにライトニングの唇からは言葉が溢れ始めた。

「まずひとつ。どうしてそんなことを誰かに言われないと気づけない?」

語調はフリオニールを責めているものの、その口調に既に怒りは感じられない。
寧ろその声を強く彩っているのは哀しみの方で―自分の何がライトニングを悲しませてしまったのか、フリオニールにはおぼろげな想像しか出来なくて。

「それからもうひとつ。自分の知らないところで私に何かあったら耐えられないというのならどうして私も同じだということが理解できない?」
「ライト…」
「理解していないから、一瞬でも私から離れると言う選択肢が思い浮かぶんだろう…それで仮に私が巻き込まれずに済んだとして、その代わりお前に何かあったら私がどう思うか考えもしなかったのか?」

ライトニングの言葉はひとつひとつがフリオニールの言葉を抉る。結果としてその選択をしなかっただけで、ライトニングの言っていることは何も間違っていなかったから。
自分の考えたことが、ライトニングの為と言いながら―どこまでも自分本位だったとライトニングに言われるまで気づけなかったのだから…


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