Chapter/04-5/5-
「終わった、か」
肩で息をしながら壊れたイミテーションを見据えているフリオニールに、ライトニングはそう声をかける―ああ、と短く答えてフリオニールはあたりを見回した。
気づいているのだ。殺気を放っていたのはイミテーションだけではないということを―
「イミテーションごときでは貴様の相手には不足、か」
その声はとても聞きなれたもの。出来れば聞きたくはなかったが、それでもフリオニールにはとても覚えのあるもので―
声のした方に視線を移すと、そこにあったのは紛れもなく―皇帝の姿。
「皇帝…!!」
「やはり貴様はこの手で始末せねばならないようだな」
「ならばかかって来い。俺は逃げも隠れもしない!」
皇帝を睨みつけたままはっきりとそう言い切ったフリオニールに対し、ふん…と鼻で笑って皇帝は踵を返す。
「未だ機は熟していない…今のうちに束の間の平穏を楽しんでいるがいい」
「待て、皇帝!」
その後を追おうとしたフリオニールであったが、皇帝は背後にあった崖にひらりと身を躍らせ…フリオニールが崖の際までたどり着いた時にはもうその姿はそこにはなかった。
逃げられたか、と思っていたところで背後に響く足音…勿論、その足音の主が誰なのかは振り返らなくとも分かっている。
「…それで、一体どういうことなんだフリオニール」
ライトニングの問いかけにどう答えるべきか。言葉を選ぶフリオニールは再びライトニングの顔を見ることが出来なくなっていて―
無論彼女自身は今は無傷だ。だが目の前のフリオニールの肌には無惨に火傷の跡が残っている。
本来であれば自らの縄張りを侵した者に攻撃を加えるはずが、明らかな意思を持ってこちらに襲い掛かってきたイミテーション。そしてどうやらイミテーションを使役していたらしい皇帝。
そしてその状況に何の戸惑いも見せず、皇帝がそこにいたことをフリオニールは当たり前のように受け容れていた。
状況を知らないライトニングからすれば、それを不審に思うのは当然だろう。
「…俺の一存では話せない…でも」
フリオニールはそこで振り返り、ライトニングの手を取って歩き出した。
事の真相を伏せたままで巻き込まれた者は納得するだろうか、そう言っていた張本人の元へ―