Chapter/04-3/5-
「話を立ち聞きするようなみっともない真似はしていないから安心しろ」
言い残して早足で歩いていくライトニングを、フリオニールは慌てたように追いかける。
今はまだ話せないことが多い、そのことでライトニングが機嫌を損ねているのではないかとふと不安になって…ライトニングの一歩後ろを歩くフリオニールには、今のライトニングがどんな表情を浮かべているのかすら察しがつかない。
「…ごめん、ライト」
「藪から棒になんだ。何か私に謝るようなことでもしたのか」
相変わらず早足で歩き続けるライトニングはそれでもフリオニールの方を振り返ることはない。
どう言葉にしていいのか決めかねて、フリオニールはライトニングの一歩後ろを歩きながら視線だけはどこか遠くを彷徨わせている…元々の体格差が幸いして、視線を合わせこそしていないもののライトニングから遅れを取ることはなく…
何も言わないままただ自分についてくるフリオニールの心中を察したのか…ライトニングは相変わらずフリオニールの方を見ないままではあったが、先ほどまでとは明らかに違う優しい声がフリオニールの耳に届く。
「お前は自分の意思で私に隠し事をしたりはしないと思っている―口止めをしているのがあいつなのか、それともジェクトやゴルベーザなのかまでは訊くつもりはないが」
「…ライト…怒ってるんじゃないのか?」
「怒っているとしたら…お前に何が起こっているのか全く推測すら出来ない自分自身に対してだろうな」
そこでようやっとライトニングが振り返る。その表情はどこか薄くはあったが、それでもしっかりと視線がフリオニールを捕らえる…
その表情には怒りがあるのでは、と想像していたフリオニールは、ライトニングがその次に浮かべたのが穏やかな笑顔だったことに虚を突かれたかのように言葉を止める。
「ライト…俺に怒らないのか?何も言わない俺に対して腹が立たないのか?」
「さっきも言っただろう、お前が自分の意思で私に隠し事をするとは思っていない―自分の恋人も信じられないようで何を信じると言うんだ」
そう言ってライトニングがフリオニールに向かって腕を伸ばす…その手をフリオニールが取ろうとした瞬間に…感じる殺気。
とっさにフリオニールは手を引っ込め、目の前のライトニングに向かって取り様によっては乱暴にも聞こえるような口調で声をかける。
「下がれ、ライト!」
その声に反応したのかそれとも殺気に反応したのか、ライトニングは素早い動きで横方向に身を翻す。
それを確かめるとフリオニールは今までライトニングが立っていた場所へ歩を進め、脹脛のあたりに差していた短剣を抜き放つと殺気を感じた方向へと素早く投げる―
確かな手応えと共に短剣が殺気の主―イミテーションに突き刺さる。フリオニールはそのまま短剣を手元へと引き寄せ、イミテーションを大きく殴り飛ばす。
吹き飛ばされたイミテーションを追ってフリオニールは走る。途中イミテーションが放った火の玉をかわし、宙へとその身を躍らせた。
そのまま腰に差していた杖を抜き放ち手早く魔法を詠唱する。
「雷鳴よ!」
杖を振った先に上空から雷が降り注ぎ、イミテーションの身体は地面へと叩きつけられる―それを狙ったかのように、ライトニングがイミテーションの方へと駆け寄った。
「風よ!」
ライトニングの放った風の魔法によりイミテーションの動きが止まる。それを好機と見たフリオニールがひとつ念じると、彼が身に纏った武器がその意に沿うかのように上空へと舞い上がってゆく。
「俺の全てを賭けるっ!」
まるで自分の意思を持っているかのように舞い上がった武器たちに命じるかのようにフリオニールは大きく腕を振り下ろす。
それに従うかのように武器はイミテーションに向かって降り注ぎ、その身体を削り砕いていく。が、まだその動きを止めることはない―