Chapter/03-3/3-






「…手助けは無用、と言いたいところだが」
「あやつが狙ってきたのは私だ。お前だけに戦わせるわけには行くまい」
「そう言うと思った」

はあ、とカインはひとつ息を吐く…そこで、ゴルベーザとカインの耳に届く足音。
そちらに目をやると、急いだ様子で2人に駆け寄ってくるフリオニールの姿が見えた。
そう言えば自分の次の見回り当番はフリオニールだったな、とカインが思い出したところで、フリオニールは2人の目の前までたどり着くと周囲の、戦いの痕跡を残す風景を視線で辿りながら最後にカインを見据えた。

「カイン、これは…一体何があったんだ?」
「…イミテーションの襲撃だ。心配するな、あの程度どうと言うことはない」
「しかし…」

フリオニールの視線はそこで、ゴルベーザをちらりと捕らえる。
言葉が続かないのは、カインに対してその「続き」に当たる言葉を告げていいのかどうか決めかねているからだろうか。その表情には迷いの色が濃く出ている―
その、フリオニールの迷いに気づいたのだろう。ゴルベーザは短くフリオニールに告げた。

「私に縁があるのはカインも同じだ…カインにはこの後詳しい話をするつもりでいる」
「…そう、か。それもそうだよな」
「お前も何か知っているようだな」

カインの言葉に、フリオニールは小さく頷いてみせる。だが、自分が知っている内容を今話すようなことはしない―ゴルベーザが話すというのであればそれに託せばいい、フリオニールはただそう思うのみで。
言葉を出さないフリオニールを見て、カインは何事か言いたそうにそちらに視線を送ってみせる―しかし、結局カインからも言葉が出ることはなく。
今はもう静けさだけが支配する夜、3人の耳に届くのは風の音と木々の葉ずれの音ばかり。
どう言葉にしていいのか、誰もがそれを量りかねたままゴルベーザは2人に背を向けて歩き始めた。

「…ゴルベーザ」
「カインに告げたことは光の戦士には私から話しておく」

立ち去りかけたゴルベーザが一度足を止め、そして自分の背中に視線を送っていたフリオニールのほうを真っ直ぐに見据える。
自分に視線を向けられた事に気づいたフリオニールはゴルベーザに何か言葉を向けようとして…それをどう言葉にしていいのか、逡巡した結果黙り込むことしか出来なくて。

「そなたは既に決意していると私は思ったが…違うか」

ゴルベーザの言葉の意味を察して、フリオニールは真剣な表情でひとつ頷いた。
それに対し、ゴルベーザもまた頷きを返す。

「それならばそれで良い―そなたたちの意思の力はどんな試練も困難も打ち砕くことが出来る、それを忘れてはならぬ」

それだけ言い残すとゴルベーザは再び歩き始める…カインは無言のまま、そのゴルベーザの背を追うように歩き始めた。
その背中をじっと見つめていたフリオニールだったが、ゴルベーザの言葉を反芻するかのように瞳を閉じる。
意志の力。
そう、フリオニールは既に決意している。例え再び皇帝と戦うことになり、己にどんな困難が襲い来るとしても…ライトニングだけは守り抜いてみせると。
そしてライトニングが自分と共に戦うというのであれば…彼女の隣に並び立つに相応しい強さを持っていたいと。

「…戦うしかない、よな」

自分に問いかけるようにフリオニールは小さく呟き…そして、周囲を警戒したまま歩き始めた。
ライトニングを守らなければならない今の自分はそう簡単に倒れるわけには行かないのだと自分に言い聞かせながら。


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