Chapter/02-2/4-
「おいおい、なんだアイツらいつの間にデキちまってたんだ?」
その様子を眺めていたジェクトが、傍らにいたラグナにそんなことを尋ねている―ラグナのほうはニヤリと笑うと小声でその言葉に答えを返す。
「具体的にいつってのはオレもよく知らないけど、まぁ心当たりはなくもない…かな?」
「かーっ、若いってなぁいいもんだなぁオイ。見ろよあの、なんか初々しい感じ。でもありゃ2人になると途端にベタベタしだすタイプだな」
「あー、いいねー青春だねーそれ。シャイなフリオニール君とクールなライトニングさんも2人の時間となると一転してイチャイチャしだしてさ、こう…真面目な顔で『愛してるよ』とか囁きあったりとか」
「…頼むからでかい声で恥ずかしい話すんのやめてくれよオヤジ。ラグナもな」
いつの間にかその2人の背後にはティーダとユウナが並んで立っていて、その声に驚いたかのようにジェクトとラグナが振り返る。
ティーダは本気で恥ずかしそうな表情を浮かべている。…流石に自分の父親が仲間の色恋沙汰について楽しそうに喋っていれば恥ずかしくなるのも無理はないというものだろうか。
「けどさ、普段はティーダもあの2人をからかってる側じゃないか?」
バッツのそんな呟きに対してティーダは答えを返すことはない。と言うより分かっていて無視したのであろうが、隣に立つユウナにチラリとだけ視線を送る。
「ユウナ、オレちょっとフリオニールに話あるから暫くオヤジと一緒にいてくれ。でも、なるべく早く戻る」
「…うん、分かった。…気をつけてね、ティーダ」
ユウナの言葉に頷くと、ティーダはジェクトに対して先ほどまでとは全く違う表情を向けた。
「そう言うことだから、暫くの間ユウナを頼む」
「おう。その代わり早く戻ってこいよ。ユウナちゃん守るのはお前の役目だろ」
「今更オヤジに言われなくたって分かってるよ」
鼻の下を擦りながらそう言い残して、ティーダはフリオニールの方へと走っていく。
フリオニールとライトニングはまだどことなく気まずそうな空気を残したままで互いに視線を合わせようとはしていない―
「フリオニール、ちょっといいっスか」
「…あ、ああ…ライト、その…もうちょっと考えがまとまったら絶対話すから、もう暫く…待ってて欲しい」
それだけ言い残して、フリオニールはティーダに手を引かれるまま人のいない方向へと走っていく。
ティーダの表情が晴れやかなことであることから、きっとユウナに全てを話したのであろうことは想像に難くない。
それに引き換え今の自分は…と、無為にまた落ち込む考えを抱いてしまうフリオニールであった。
フリオニールの腕を引いて歩く中、ティーダはセシルの姿を見つけてそちらに手を振る。
セシルも気付いたのか、ゴルベーザから離れてすぐに2人の元へ駆け寄ってきた。
「セシルもちょっと聞いてやってほしいっス。フリオニールがまたなんか悩んじゃってるみたいで」
「ティーダ、俺は別に…」
「…顔に出てるよ。僕達でよかったら、話を聞かせて欲しい」
2人はフリオニールを促すようにして、人に話を聞かれることがないであろう辺りまでやってきた…そこでまずはティーダが真面目な顔で問いかけてきた。
「で、何がどうなってライトと喧嘩みたいなことになっちゃってんスか。この大事な時に」
「ライトと喧嘩?」
フリオニールが何か悩んでいることには気づいたもののその経緯は知らなかったらしいセシルが首を傾げてみせる―ティーダはひとつ頷くと、手短に経緯を説明していた。
「オレがユウナに全部話してから戻ってきたら、なんかふたりとも表情がくらーいことになってて」
「喧嘩って言うんじゃないんだ、でも…どうかしたかって聞かれたからどうもしないって言ったらお前は嘘が下手だって…俺、ライトを怒らせたみたいで」
「でも、ライトには言えないから悩んでる、ってことでいいのかな」
セシルが確認するように問いかける…しかし、フリオニールは首を横に振った。