Chapter/02-1/4-






仲間達の元に戻ったウォーリアオブライトは、それぞれ好き好きに時間を過ごしていた仲間達を一度野営地の中央部分に集める。
一体何事かと思いながらも呼び集められた仲間達は、ウォーリアオブライトの言葉が始まるのを待った―
全員の視線が集まっていることを確認してから、ウォーリアオブライトはゆっくりと口を開きいつものよく通る声で話を始めた。

「これから暫く、ゴルベーザとジェクトが我々の旅に同行することとなった。かつて混沌の神の戦士ではあったが、この2人は今我々に敵意を持っていない。それは私が神に誓って宣言しよう」

話を聞いた一行はにわかには信じられないと言った様子で互いの顔を見合わせている。
しかし、中にはジェクトがかつて自分たちの仲間であったことを記憶している者もいる―それに、セシルの話を聞いていればゴルベーザの人となりはよく分かっているつもりだったし、誰もそれに対して異論を唱えることはなかった。
誰からも反対の声が上がらなかったのを見て、微かにセシルが安堵の表情を浮かべる。
ともすれば彼は、それでも混沌の神に仕えていた者と共に行動は出来ないと仲間から兄の存在を拒絶されることを心のどこかで心配していたのかもしれなかった。

「まぁ、なんにせよ一緒に行くってんなら仲良くやろうぜ」

ラグナが2人に遠慮なく歩み寄ると、右手でジェクトの、左手でゴルベーザの背中をバシッと叩く。
いつもの彼らしいその行動に仲間達からも笑いが零れる―秩序の神の戦士だった者達は皆、その笑い声でゴルベーザとジェクトを「仲間」として受け容れたのかもしれなかった。
その後は、秩序の神の戦士達がわらわらと「新しい仲間」のもとに集まり始める―
オニオンナイトはかつての戦いでゴルベーザに導かれたことがあったのを覚えていたのかティナを伴って何事かゴルベーザに一生懸命話をしていたし、かつてジェクトが秩序の神に仕えていた頃のことを覚えている者はジェクト本人が覚えていないまでもその時の思い出話をジェクトに聞かせていたり―

「…そう言えば、ティーダとユウナの姿が見えないようだが」

会話に加わることはなかったが、その様子を遠巻きに眺めていたライトニングがふとそんなことを呟く。
そのすぐ近くにいたカインがその言葉に呼応したようにあたりをきょろきょろと見回した―確かに、2人の姿はそこにはない。

「言われてみれば確かにそうだな。ティーダはともかく、ユウナにはジェクトに対して積もる話でもありそうなんだが」
「お前ら何野暮なこと言ってんだよ、愛し合う2人がこっそり姿を消した、なんてそんなのデートに決まってんじゃん」

いつもの悪戯っぽい笑みを浮かべたままのジタンの言葉に、ライトニングは首を捻っていた。
いくらなんでも、元の世界からの因縁を持つ者が旅に同行するなどと言う話を聞いてその直後にその場から姿を消すと言うのは不自然なような気がしなくもなく―

「フリオニール、お前何か知らないか?さっき集まって話していたときに何か聞いているんだろう」

ライトニングからは少し離れた位置で仲間達の様子を見守っていたフリオニールではあったが、ライトニングから声をかけられて慌てたように振り返る。
話を聞いていなかったわけではない。寧ろ、しっかりと聞いていたが…ウォーリアオブライトから他の仲間には話すなと言われている以上、そしてその「他の仲間」にライトニングが含まれてしまっている以上今のフリオニールには何かを言うことなんて出来るわけがなくて。

「い、いや…俺は、何も」
「…お前がそう言うのならそう言うことにしておいてやる…だがフリオニール、自分が嘘が下手だと言うことをもうちょっと自覚しろ。もう何度お前にこれを言ったかは覚えていないがな」

ふい、と視線を逸らしたライトニングが拗ねたように見えたのはフリオニールの気のせいだろうか?
勿論ライトニングには見抜かれてしまったとおり、今フリオニールはライトニングに嘘をついている。
それに…フリオニールの中にはひとつ懸念していることがあって。それが解決するまでは、ライトニングには必要のないことを話してしまうことはできなくて…
しかしそれでも、目の前で明らかに気分を損ねていることが見て取れるライトニングをそのままにしておくことは出来ないわけで。

「…気を悪くさせたなら謝る。ただ…その、俺の中でもまだ…考えがまとまっていない部分があるから、今はまだ…」
「謝るくらいなら最初からそう言えば良いだろう。そう言う理由で話ができないものを無理やり聞き出そうとするほど私は子供じゃない…だが、お前が私に嘘をつくのは嫌なんだ」
「うん…それは知ってるんだけど…その」

どう言えばいいんだろう、言葉が上手くまとまらない。
ライトニングを怒らせてしまうとしたらそれはフリオニールにとっては本意ではない、だがそれでも今は…まだ、話すことは出来なくて。
自然とライトニングから目を逸らす。少し俯きがちな視線はライトニングを捉えていない…だからフリオニールは気付かない、ライトニングがそんな自分を哀しそうな瞳で見つめていることなど。


←  Next→




MENU / TEXT MENU / TOP
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -