Chapter/18+-2/2-






「なぁ、あんた。いっちょおれと手を組まねえか―あいつらが、おれ達との決着をつける前に誰かにやられちまうことがないように」

ギルガメッシュのその言葉に、セフィロスは静かに首を横に振った。
それだけを答えにしても良かった、だが―何の気まぐれか、セフィロスはその後に言葉を繋ぐ。捨て置いてもいいはずの戯言に答えを返す―彼らしくないことはセフィロス自身が一番よく分かっていたが。

「私は誰にも従うつもりもないし誰と手を組むつもりもない」
「…冷てえな」

短いその呟きに、さほど不満な色が見て取れなかったのはともすればギルガメッシュもセフィロスのその答えを予想していたから…なのだろうか。

「ま、いいさ。おれはおれのやり方で―バッツがおれと戦うまでくたばらねえように見守るだけだ」
「…クラウドは見守るまでもなく生き残る―私はそう思っているが」
「ちーとばかりあんたが羨ましいよ、バッツの野郎おれのこと忘れてるからな」

その言葉と共にその場に響き渡った笑い声には、言葉とは裏腹に悲しそうな響きは一切含まれていなかった。寧ろ、しょうがない奴だとでも言いたそうな―
バッツと言えばあの、自由な旅を謳歌していた旅人だったはずだが彼とこの頭巾の男の間には一体どんな因縁があるのだろうか―セフィロスには本当に珍しく、ほんの少しだけそんなことが気にかかった。

そこからはセフィロスもギルガメッシュも言葉を発することなく、遠くへ進んでいく秩序の神の戦士達をただ見つめている。
その姿が森の中へ消え、この場所から見えなくなるまでずっと、ずっと。
そして、秩序の神の戦士達の姿が見えなくなると―セフィロスは普段は隠したままの片翼を広げ、そのまま崖から身を躍らせ―宙を滑り始める。
背後から「早まるな…って、あ…あれ?」なんて間の抜けた声が聞こえてきていたがそれには気がつかない振りをしたまま、秩序の神の戦士達が向かった方向へと空を切り、空を舞う。
宵闇の中、セフィロスの翼から抜け落ちた漆黒の羽が宙をふわり舞う。その身が向かう先は秩序の神の戦士達が向かう道の遥か先。

自分を追っていたはずのクラウドをいつしか自分が追っている。その矛盾に気付いていないわけではなかった。
だが、クラウドが簡単に皇帝の手にかかることなど許されよう筈がない―自分の元いた世界に通じる鍵を握っているのはクラウド。
この世界の、一度壊されたはずの輪廻の中に再び舞い戻ることとなった理由を探る為に必要となるのはクラウドとの戦い―セフィロスはそう信じている、だから。

ふわりと地に足をつけたセフィロスが見据えていたのは命を持たぬ人形―イミテーション。
今この世界でイミテーションなどを使うものがいるとすればそれはきっと、皇帝のみ。

「クラウドを貴様らの―皇帝のかけさせるわけにはいかない…私が、帰るべき世界への鍵を取り戻すまで」

セフィロスはその手にある、その身の丈よりも長い刀を一閃して目の前に群がるイミテーションを吹き飛ばす。
決して数は少なくはないが、セフィロスの手にかかればこの程度どうと言うことはないだろう。

「…連中がそう簡単に倒れることはないだろうが、な」

先ほど出会った男―ギルガメッシュが同じように秩序の神の戦士達を見守っていると言うのならば、きっと彼らはそう容易く皇帝の手にかかることなどないだろう。
そんなことを考えながらセフィロスは再び大きく刀を振るった―


「…全く、気まぐれな奴の多いことよ」

複数のイミテーションを斬って捨てたセフィロスの背後辺りで風に混じって聞こえてきたその声が暗闇の雲のそれにとてもよく似ていたことに―きっと、セフィロスは気付いていない。


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