Chapter/18+-1/2-






「おい、そこのお前」

秩序の神の戦士達が混沌の大陸を目指し歩き始めた姿が見通せる高い崖の上。
その崖の上から戦士達の姿を黙って見つめているセフィロスの背後から、どこか芝居がかった声がかけられる―セフィロスがその背に感じる気配は、歴戦の戦士のもの。
元いた世界で英雄と呼ばれた彼だからこそ分かるその気配に、セフィロスはゆっくりと振り向いてみせた。
その視界に映るのは、声の主と思しき赤い頭巾の男―のそりのそりとしたその足取りは気付けばセフィロスの隣に並び立ち、共に秩序の神の戦士達の姿を追っている。

「…貴様も…待っているのか」

呟きと共に、鋭い風がセフィロスの長い銀色の髪を撫でる。
靡いた髪は頭巾の男の顔の前にばさりと広がり、男は邪魔そうにその髪を振り払いながら…セフィロスの言葉に大きく頷いてみせた。

「あいつらの戦いが終わらなきゃ、決着が付けられない相手がいるもんでな。その様子だとお前もか」
「…クラウドが誰のために何を守り戦うかなど興味はない…だが、かつて私を追い私に導かれるまま進んでいた人形が私から目を逸らしたことは…」

人影の中に一際目立つ金色の髪。何処かチョコボの羽色を思わせるようなその頭に視線を送りながらセフィロスは小さく鼻を鳴らした。
今自分の隣にいる赤い頭巾の男がどのような顔をしているのか、セフィロスは全く興味を抱くことが出来ない。
そもそも、頭巾の下には白塗りの化粧が施されていて表情など読み取ることはできなかったし。
男が黙ったままであるのをいいことに、セフィロスは飲み込みかけた言葉を吐き出していた。その声音に、不愉快そうな色を多分に孕んだまま。

「…些か、面白くはないな」
「些かどころじゃねえ。おれがこんなとこに来たのはバッツとの決着をつける為だったとおれは思ってるのに」

鼻を鳴らす動作も、セフィロスのそれと違って何処か荒々しい頭巾の男。その所作はセフィロスとは正反対にあるように思えるのに―その心の内にあるものはセフィロスととてもよく似通っている。
それがなんだか可笑しくて無意識に口の端が上がっていた―男はきっとそんなことには気付いていないのだろうけれど。

「―おれより先に戦わなきゃいけない相手なんて、そんなもんこのギルガメッシュ様が認めると思ってるのか…と言いたいところだが今のバッツと戦っても仕方ないからな」

大きく掌を広げて見せながらそんなことを呟く男―ギルガメッシュの所作はやはりどこか芝居がかっているようにすら見える。
それが不愉快に感じないのはセフィロスがさほど彼に興味を持っていないからなのか、それとも―彼がその巨体から滲ませている奇妙な雰囲気のお陰なのか。
考えるのも面倒だというようにセフィロスは頭を軽く振り、そして再び秩序の神の戦士達に視線を戻した。

「私は皇帝の支配には従うつもりも抗うつもりもない」

隣にいるギルガメッシュは果たしてセフィロスの言葉を聞いているのだろうか。
聞いていないからとてどうと言うことはないのだが、ふと気になって視線だけをギルガメッシュの方へと移す。
頭巾の奥から、その目が真っ直ぐにセフィロスを捉えている―ギルガメッシュは間違いなく、セフィロスの言葉の続きを待っている。一体どういう意図を持ってのことかはセフィロスには分からないが。
ふう、と短く息を吐き、風に靡いたままの銀色の髪を軽く手で押さえてみせた―そうしなければ、ギルガメッシュに遠くを往く戦士達の姿が見えなくなってしまうから。

「だが―クラウドが私以外の何者かの手にかかることなど私は許さない」
「気が合うな、おれも同じだ―バッツを倒すのはおれだ、それ以外あっちゃいけねえと思ってる」

気が合うと言われたことは喜ぶべきなのか、それとも。
その答えはセフィロスには分からない―そもそも、理解するつもりがない。
この男がそうであるように、セフィロスもきっとまた―関心を抱いている人間はたったひとり、己の宿敵のみ。
だから。


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