Chapter/18-2/4-






「…皇帝がこの世界を支配してしまったとしたら、こんな風にくだらないことを言って笑い合うこともできなくなるのかな」

何気なくセシルの呟いたその言葉に、一行は言葉を止める。
だが、沈黙に支配されたことに気付いたのかセシルはすぐにいつもの柔らかな笑顔を浮かべてみせた―その笑顔は、どこか取り繕うように見えなくはなかったけれど。

「ごめん…変な事言っちゃって」
「いや、だがお前の言うことは本質では間違っていないからな…だからこそ、俺達は皇帝を止めなければならない」

フォローするように呟いたカインの言葉。そして一行を先導するゴルベーザが言葉を発しないまま微かに頷いてみせた。
実際に、皇帝の支配する世界を知っているフリオニールだけではない。皇帝の性格を考えれば、彼が神々亡きこの世界を支配し始めたとしたらどうなるかはなんとなく想像できている、から。
それ以降誰も言葉を発しない、沈黙に支配された一行…だがその時、一行の頭上から響くかのように聞こえてきた声。

「…つまりぃ、あなた達は敵は皇帝だけだと思ってる、と?そ〜ゆ〜ことですねぇぇぇ?」

何処か神経を引っかくような声。そして聞こえる哄笑…その声を聞いた途端に、一行の中ほどを歩いていたティナの表情が強張る。
それを見てとったのだろう、そして彼自身もその声には聞き覚えがあったから―オニオンナイトの眉がきりりと上がり、その手は何のためらいもなく剣を抜き放った。そして声の聞こえてきた上方へと視線を送る。
同じようにクラウドはバスターソードの柄に手をかけ、そしてそのクラウドの様子を見て何事かを察したティファもぐっと拳を固めていた。
ティナは躊躇うかのように唇を噛み締め俯いていたが覚悟を決めたように顔を上げ、そして―普段の彼女からは想像も出来ないほど強くはっきりとした声で言い放った。

「ケフカ…どこにいるの、出てきなさい!」
「や〜なこった。ボクちんはアルティミシアみたいに簡単に姿見せて怪我させられたりするほどマヌケじゃないもんねー」

声はすれども姿は見えず。一行は辺りの様子を窺いながら、何処かにケフカが隠れているのではないかと視線だけを動かしている。
今、単独行動をするのは得策ではない。そうすることによって、誰か一人が集中して狙われる可能性だってゼロではないのだ―だから敢えて、それぞれにすぐに戦えるよう武器に手をかけたまま視線だけで辺りの様子を窺っている。
しかし、視線だけでは探せども探せどもケフカの姿を見つけ出すことは出来ず…苛立った様子で舌打ちをしたのは誰だったのだろう、一行はそれすら自分たちで判断できないほどに苛つきを覚えていた。

「皇帝を止めればそれで全てが終わると思ったら大間違いよーん。ほーんと、キミ達見通し甘すぎって言うか」
「ケフカ…お前、何を企んでるんだ」

ティナの側に、相変わらず剣を強く握り締めたまま控えていたオニオンナイトがそう問いかける。
問いに対して返って来たのは、やたら耳障りな笑い声と―そして、本当にケフカの声なのかと疑いたくなるような低く、おぞましい声。先ほどまで上空から聞こえてきていたように感じられていたその声は、今度は地の底から一行の足元を這うかのように響き渡ってきた。

「皇帝が完成させた支配を破壊する…ただそれだけのこと」

ぞくりと一行の背中にうそ寒いものが走る。
彼らが知っているケフカの、見た目同様道化そのものの滑稽な喋り方も人をバカにしたような声色もそこにはない。その声から感じ取れるのは、化粧の下に隠され続けてきた彼の素顔―残忍で高慢な、ケフカの本質。
言葉の後はただひたすらにケフカの笑い声だけが響いている。一体ケフカはどこにいるというのだろう、その姿はないのに、戦士達をバカにしたようなその冷たい高笑いだけがその場に響き渡る。


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