Chapter/18-1/4-






ギルガメッシュを退けた―と言うよりはギルガメッシュが口車に乗せられて勝手に退却しただけとも言えるが―一行は朝食を取り、そして再びこれからの目的を確かめ合うかのように頷きあって混沌の大陸の方向へと向けて進み始めた。

「無論、テレポストーンを使えば混沌の大陸などすぐそこだ。だが」

言葉にしながら遠くに―混沌の大陸の方に視線を送るウォーリアオブライト。その瞳はいつもの彼らしく真っ直ぐで、その奥には仲間達を思う思慮の心が秘められている。
それが分かっているから、皆黙ってウォーリアオブライトの言葉が続くのを待った。
今は共に行動する仲間だと言う認識がないのかもしれない、そんなことを思わせる言動の多いクジャでさえウォーリアオブライトが黙ったまま言葉を選んでいるのを黙って待っていた。
それを察しているのだろう、ウォーリアオブライトは言葉を選びながら仲間達に自分の考えを伝えていく。

「…テレポストーンを越えた先にイミテーションが待ち構えていない保障はどこにもない。慎重を期するのであれば、辛い旅になるのは分かっていても自分の足で向かうのがいいのではないかと私は考えている」
「俺もその意見には賛成だ。皇帝は罠をかけるのが得意だからな、テレポストーンの近くに罠を張って俺達がかかるのを待ち構えている事だって考えられる」

ウォーリアオブライトが告げた言葉に続けて言葉を繋いだフリオニール。そのどちらにも反論しようなどと言うものは現れなかった。
考えすぎだといわれても少しでも安全な方法を選ぶ、それは仲間達を守るために。2人のその気持ちが分かるからなのだろう、皆その意思に従うかのように彼らの言葉に頷き、ウォーリアオブライトは安堵したかのように薄く笑みを浮かべた。

「…長い旅路になるとは思う。だがこの世界を、神々が遺した世界を守り、そして君たちが元いた世界への扉を閉ざさない為にも我々は戦わなくてはならない」

宣言したウォーリアオブライトの表情は何処までも揺らぎがない。
そんな彼だからこそ、仲間達は皆神々のいないこの世界であっても彼の元に集ったのかもしれない―誰もが口には出さないまでもそんなことを考えていた。

「無論、テレポストーンを使うのを避けたからと言ってイミテーションとの戦いを避けられるかといえばそんなことはないだろう。だが我々は独りではない。こんな時だからこそ、支えあい助け合って進むことが肝要だと私は考えている」
「僕は馴れ合うためにここにいるわけじゃないけどね」
「…あのさクジャ、オレもうそのセリフ聞き飽きたよ。なんだかんだ言って手伝ってくれてるだろ」

ウォーリアオブライトの言葉に視線を背けたクジャと、そのクジャに対してのほほんと言い放ったヴァン…そして、クジャは悔しそうに唇を噛み締める。
そのやり取りに一行からは笑いが漏れた。クジャはいつになっても素直になる素振りを見せないものの、彼の考えていることなど戦士達は既にお見通しではあった。

「混沌の大陸への道案内は君たちに頼むことになると思う…ゴルベーザ、ジェクト、クジャ。それで構わないか」
「いいだろう。確実に皇帝の居城の場所を知っているのは私たちだけだからな」

大きく頷き、先頭を切って歩き始めたゴルベーザ…そしてその後に、仲間達が順番に続く。
一団がある程度進んだところで、ジェクトは己が最後尾に来たのに気付いたかのようにゆっくりと足を進め始めた。

「んじゃ、オレはしんがりをつとめさせてもらうとするかね。はぐれんじゃねえぞてめぇら」
「大丈夫だ、ラグナ以外にはぐれるような奴はいない」
「…ライトあのさ、その言い草はいくらなんでも酷いんじゃないかなぁ」

ライトニングの冷たい言葉に対して苦笑いを浮かべるラグナ、そしてまた一行の間に走る笑い。
戦いの最中、ともすれば重くなりそうな空気がこうして解されている―仲間の存在がかけがえのないものなのだと、誰もがそう心の底から感じる事ができるようなそんな瞬間。


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