Chapter/17-3/4-






そんなことを考えながら一行はギルガメッシュとバッツの対峙をただ見守っている。口を出していいものかどうか分からず、ただ見守ることしかできないと言うのが正しいだろうか。

「とにかく!おれと勝負しろ、バッツ!そして一刻も早くおれのことを思い出すがいい!」

ギルガメッシュの言い放ったその一言に、一行が感じていた違和感の正体が見える。ギルガメッシュはバッツを宿敵だと言っているにも拘らず―バッツはギルガメッシュのことを全く覚えていない、らしい。
このギルガメッシュ一人が空回っているようにさえ見える空気の原因はそれだったかと全員が改めて思い知るのであったが―だからと言って何を言えるということもなく。
ただ、バッツに迫るギルガメッシュとなんとか笑って誤魔化そうとしているバッツを相変わらず遠巻きに見守ることしか出来なかった、わけで。

「えーと、頼むから…空気読んでくれないか?」
「いいだろう、だがまずは一対一での勝負をだな」
「ごめん、言えば空気読んでくれると思ったおれが間違ってた」

頭を抱えるバッツに向かってさあさあ、などと言いながら剣を突き出すギルガメッシュ。この調子では本当に、バッツと勝負をつけないことには納まらないかもしれない。
だが正直に言えばそんなことに割いている時間が勿体無いし、こんなところでバッツが消耗してしまうのも良くないだろう。
無論、いかに普段気楽に生きているバッツと言えど考えていることは同じなわけで。

「…あの、おれ達今それどころじゃなくてさ。おれが自発的に思い出したら改めてそのときにおれから勝負申し込みに行くからそれまで保留ってことにしといてもらっちゃダメかな」
「そんなこと言って時間稼いでる間に補助魔法とか使っちゃおうってハラだろう!このおれの目は誤魔化せんぞ!」
「そんな卑怯なことしないよ…」

呆れたように呟いたバッツの言葉にギルガメッシュは一瞬言葉を詰まらせる。この様子だと、ギルガメッシュは「そんな卑怯なこと」をした経験でもあるのかもしれない。
ともあれ、いきり立つギルガメッシュとそれをどうにかいなそうとしているバッツのやりとりに気付いたのだろうか…朝食の準備を終えたウォーリアオブライトがゆっくりと歩み寄ってきた。」

「一体何の騒ぎだ」
「ええい、お前は黙っていろ角兜。これはおれとバッツの神聖な一対一での…」
「だから、今のところおれにその気はないんだってば。おれ達は忙しいの。な、フリオニール」
「なんでそこで俺に話を振るんだ!」

遠巻きに眺めていたままだったフリオニールは急に名前を出されて慌てたように首を横に振る。
フリオニールには今考えなければならないことが山のようにある。そんな中でギルガメッシュに対しての対応まで考えている場合ではないと言うのが本心ではあるのだが―ギルガメッシュの側は勿論そんなことはお構いなしでぎろりとフリオニールの方へと視線を向ける。
だがフリオニールの姿を見て、何かを思いついたのか一言ぽつりと呟いた。

「ほう…いっぱい持ってるな」

その言葉が何を指すのかはギルガメッシュの視線の動きを見ていれば分かる。まずは背中の槍、ついで腰に佩いた刀と反対に提げた斧。それから弓と、ブーツに差している短剣―
視線がフリオニールの顔に戻ってきた時、ギルガメッシュの表情は白塗りの化粧の上からでもはっきりと分かる程度にはきらきらと輝いていた。

「それだけの武器を伊達や酔狂で持ち歩いているとは思えん。お前をおれと同じ、戦いに生きる世界の男と見込んで頼みがある!バッツを説得してくれ!」
「…いや、そう言われても…」

説得も何も、フリオニールは立場としてはバッツと同じなのだ。こんなところでギルガメッシュに関わって無駄な時間を使っている場合ではない―
フリオニールは視線を上方に送って思案し、そして…気付けば彼の口からは自然と言葉が滑り出ていた。


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