Chapter/17-2/4-






「アイツがお前に戦いの中心に立てって言った時、誰も止めなかっただろ?フリオニールにならできるって、オレ達も信じてるからさ」
「ジタン…」
「でもだからって無理はしすぎるなよ。オレ達のことも頼っていいんだからな。そう考えてるのはきっとオレだけじゃない…そうだよな、ライト」
「ああ…ジタンの言うとおりだ」

2人の言葉に、フリオニールは大きく頷いてみせる。勿論、彼だって仲間のことは信じている…だからこそ、いくら自分と皇帝との間に元の世界から切っても切れない因縁があるとは言えこの戦いの中で中心に立つ事をすんなりと受け容れることができたのだと言う意識はフリオニールだって持っていた。
自分はひとりじゃない。仲間達がついているから大丈夫だと…その信頼はきっと揺らぐことはない。
自然と浮かんでいた笑顔はその信頼の証―その表情を見たのか、ジタンの表情は相変わらず穏やかな笑みを湛えていた。

「…やっぱり僕はそう言う仲良しごっこは好きになれないけどね」

―その隣を通り縋ったクジャのその一言には苦笑いを浮かべることしか出来なかった、けれど。
だがそのクジャの言葉に答えるかのように、クジャの細い肩に腕を回して笑う者がそこにはいたりして。

「まったく。お前もほんと素直じゃないよなー」
「離してくれないか、バッツ。僕は君たちにそんなに馴れ馴れしくされる覚えは―」
「お。やっとジタンやゴルベーザやジェクト以外のヤツの名前を呼んだな。お前も随分こっちに馴染んできたみたいでおれは嬉しいよ」

肩に手を回したままの姿勢で無邪気に笑うバッツの言葉に、クジャは一瞬焦りの表情を浮かべる。
だが言われてみれば―クジャは秩序の神の戦士だった者たちを「君」と呼ぶことはあっても名前で呼んだことは一度もなかった気がする―かつて宿敵であったジタンを除いては。
そんなクジャが今、バッツを名前で呼んだ。そのことをバッツが無邪気に喜んでいるのがクジャには余計気恥ずかしいのだろう。如何せん彼はジタンを頼って秩序の神の戦士の元にやってはきたもののジタン以外に心を許す素振りは一切見せなかった。
孤高を気取っているのか、それとも本当に馴れ合うのを嫌っているのか―それは分からなかったが、だがそれでもクジャの心境に何らかの変化があったのであろうことは事実。
それを素直に喜んでいるバッツを見ている仲間達の表情も自然と緩み始める―だが、そのとき。

「…探したぞ、バッツ」

仲間達の背後から響き渡るその声、そちらに視線を送ると―いつだったか、フリオニール達が出会った赤い頭巾の大男がそこには立っていた。
名前を呼ばれたバッツは先ほどまでの笑顔からきょとんとした表情に変わって、大男を見つめている―

「なんだ、またお前か」
「なんだとはご挨拶だな。お前の宿敵たるこのおれ様が自らこうしてお前を訪ねて来たというのに」

頭巾の男はぎりりとバッツを睨みつけているがバッツの様子は変わることはない。ただ、肩に手を回された姿勢のままだったクジャだけが面倒そうにその手を払うとジタンの近くへと歩いていった。
ライトニングはフリオニールと同じ―以前に会った、そのときのことを考えているのだろう。確かにあの時、あの男は誰かを捜している様子であった。それがバッツだったのだと今こうして分かったのではあるが―どうも釈然としないのは、バッツの態度だろうか。

「ご挨拶って言われてもさ…って言うか、何しにきたんだ?」
「何しにきたもカニしにきたもあるか!おれの、このギルガメッシュ様の望みはお前との決着をつけること、ただそれだけだぁっ!」
「朝から大声出すなよ、うるさいから」

はぁ、と溜め息をつきながらバッツは掌で両耳を塞ぐ。その様子を見る限り、どうやら…ギルガメッシュと名乗った頭巾の男とバッツの間に何らかの因縁があるのは確かなようだがどうにもバッツの側がそれを面倒がっているように見えるのは何故なのだろうか。


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