Chapter/17-1/4-






「…私は子供じゃないんだぞ」
「だけど、ライトは『個人として』狙われてるんだからやっぱりあんまり長時間ひとりになるのは…」
「皇帝に真っ先に狙われるお前が何を言っている、私より先に自分の心配をしたらどうなんだ」

見回りの時間を終えたライトニングとそれを迎えに来たフリオニールがそんな会話をしながら仲間達の元に戻り始めた頃、他の仲間達も目を覚まし始めたのかテントから三々五々姿を見せ始める。
未だクラウドとティファが戻ってきた様子はないが、それについてどうこう言う必要もないだろう―そんなことを考えながら、フリオニールは朝食の準備を始めたウォーリアオブライトの視線がこちらに向かっているのに気付いて自然と足を向けた。
その足音に気付いたのだろう、ウォーリアオブライトは顔を上げるとフリオニールに真っ直ぐな視線を向けて口を開く。

「おはよう。…君には今日から重責を負わせることになってしまうのは心苦しいが…勿論、私も出来る限り君をサポートする、それは約束しよう」
「ああ、あなたが俺に、戦いの中心に立つように伝えるだけ伝えて放っておくようなことをする人じゃないことは良く分かってる」

フリオニールの言葉に頷きだけを返したウォーリアオブライトは再び朝食の準備に取り掛かる。
実際、彼に対しての信頼があるからこそ―無論、皇帝と戦うべきは自分だと言う意識もあってこそではあるが、この戦いの中心に立つようにと厳命されてそれを当たり前のように受け容れることが出来たのだとフリオニールは思っている。
伝えるべきことを全て伝えると、フリオニールは一度振り返り先ほど自分が歩き出した地点で立ち止まっていたライトニングの方へと再び向かう。

「…あいつは、なんて?」
「俺に重責を背負わせることになったのが心苦しい、ってさ…敵が皇帝である以上、あの人に言われなくたって俺は戦うつもりでいたんだけどな」
「だがお前は放っておくと余計なものまで背負い込んでしまいかねないからな…私のことも含めて」

呆れたように呟いたライトニングの言葉に付け加えられたその一言に、フリオニールは首を横に振る。
フリオニールの中にはずっと―ライトニングを巻き込んでしまったのは自分だ、と言う消えない罪悪感があった。
無論、ライトニングは言うだろう。自分は望んで巻き込まれたのだと―それが彼女の性格だ。そんなことくらい、この世界に随分長い間いてその間ずっと一緒にいるのだからフリオニールにだって分かる。
だが果たしてその言葉に本当に甘えてしまっていいものだろうか。フリオニールはずっとそれを考えていた。
自分が一方的に守ると言ったところで、それは間違いなくライトニングは断るのだろう。だがもしもライトニングが自分と恋仲でなければこうしてライトニングが狙われる事はなかったはずで、そうだとしたらライトニングを守るべきは自分。だがきっとライトニングは―
その堂々巡りの考えがずっとフリオニールを支配している。あまりに考え込みすぎて、何が正解なのかどころか何を考えるべきなのかすら分からなくなることだってある程度には。

「…そんな難しい顔をするんじゃない」

隣で呟かれたライトニングの声がなんだか寂しそうに聞こえてフリオニールは顔を上げそちらを見遣る―先ほどの声が寂しそうに聞こえたのは自分の気のせいだったのだろうかと思いたくなるほど、ライトニングの表情は冷静なものではあったが。
だが、自分が考え込んでいることをライトニングに見抜かれたことがなんだか恥ずかしく思えてフリオニールは再び首を横に振った。
さっきとは違う意味で。こんな調子でいるわけには行かないと自分に言い聞かせるかのように。

「…全く、朝っぱらから仲のいいことで」

呆れたようなその声に慌てて振り返ると、苦笑いを浮かべたままこちらを見上げているジタンの姿がそこにはあった。
口調だけを取るとからかうようにも聞こえるが、ジタンはジタンなりにフリオニールを気遣っているのだろう―その証拠に、言葉の次にジタンはフリオニールに歩み寄るとその背中を掌で叩いて笑みを浮かべて見せた。

「あんまりレディに心配かけるんじゃないぞ?ま、責任重大なのは分かってるけど…」

そこで一度言葉を切ったジタンは笑顔を崩すことなく、視線をフリオニールとライトニングに交互に送ってみせる。
そして人差し指を立て、そのままその人差し指はフリオニールの方へと向けられた。


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