Chapter/16-4/4-






「今のはカッコつけすぎだと思うな」

からかうようなその口調―だがそれは、戦いに疲れたクラウドをねぎらう為に敢えて放たれたものだとクラウドにだって分かっている。
足を止めることはないままティファのほうを見遣り、言われた言葉の返事ではなく―先ほど、逆にティファから答えの返ってこなかった質問を再度口にした。別にティファは意図して無視したと言うわけではないだろう、戦いの中で答えている余裕がなかった、ただそれだけだと分かってはいたけれど。

「なんで俺が戦ってるのが分かった?」
「分かった、ってわけじゃないの。ただ少し早く目が覚めただけ…ライトが見回りに行ってるのは分かったけど前にあんなことがあったし、心配で出てきたらクラウドの声が聞こえたから…ね」

屈託なくそう答えたティファには短くそうか、とだけ答えてクラウドは歩き続け―少し行ったところで足を止める。仲間達が休息を取っている野営地までは、まだ暫く距離がある場所で。
足を止めたクラウドを不思議そうに見ていたティファではあったが、クラウドは不意にその手首を掴むと自分の方へと引き寄せそのまま強く抱きしめていた。

「…ちょっと、クラウド…!?」
「さっきセフィロスに言った…俺を導くのは俺自身だ」

抱きしめた腕を微かに緩めると、クラウドは真っ直ぐに腕の中のティファを見つめる。ティファの表情には驚きこそ浮かんでいたものの逆らうこともなく、ただクラウドを見上げていた。
彼女が無言なのはクラウドの言葉の続きを待っているからだとクラウドにも分かる。一度目を伏せ、もう一度真っ直ぐにティファを見つめなおすとはっきりとした言葉を繋いでいた。

「だがひとりで歩いていたらまたいつ道を見誤るか分からない―だから俺の側にいてくれ、ティファ」
「…そうだよね、クラウド時々どっか危なっかしいし」

くすくすと小さく声を出して笑い、そしてティファは抱きしめられたままクラウドの頬に手を添える。
その瞬間にクラウドが見せた表情はきっと―ティファしか知らないであろう、優しくも穏やかなものだった。

「私も、私自身に導かれた上で言うけどね。ずっと…一緒だよ、クラウド」

自然とクラウドの表情には笑顔が浮かんでいた。そして引き寄せられるようにふたりの顔が近づいていく―


「なんか、見ちゃいけないものを見ちゃった気がする…」

ライトニングが心配であるが故に早く目を覚ましたのは何もティファだけではなく―朝日に照らされて口付けを交わすクラウドとティファの姿に慌てたように背中を向けながら、フリオニールはひとつ溜め息をついた。
自分にだって愛しい人はいる。だからこそ邪魔してはいけないことくらいは分かる…それにしても、自分はともかく他所の恋人たちがこうして甘やかな時間を過ごしているのを目撃するのがこんなに恥ずかしいことだとはフリオニールも思っていなかった。
自分では気付いていなかったが顔を赤くしたまま再び溜め息をついたフリオニールは、ライトニングを迎えに行く為に足音を殺したままそっとその場を後にしたのであった。


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