Chapter/16-3/4-






「どうした?その程度か」
「あまり…馬鹿にするな…」

微かに眉が動いたのは、感情の発露が薄いクラウドが明らかに怒りを覚えていることの証左。セフィロスはその怒りの感情すら見抜いてみせたのか、狂気的にも取れる表情のまま再び刀を上段に構えなおした。
いずれにせよ、ここでセフィロスに簡単に倒されてやるわけにはいかない。痛みを堪えながらも、クラウドは手にしたバスターソードを構えセフィロスに駆け寄った。そのまま自分の間近にやってくると思いセフィロスが刀を構えなおした瞬間にクラウドは足を止め、短く魔法を詠唱するとその手の先から炎の球をセフィロスに向かって放った。
虚を突かれたのかセフィロスに一瞬の動揺が浮かぶ―その隙に、クラウドは大きく剣を振りかぶると上段から振り下ろした―先ほどセフィロスがそうしたのと同じように、そこに生まれた剣圧がセフィロスめがけて襲い掛かる。
連撃と呼べるほどの速さのある攻撃ではないが、それでもセフィロスの虚を突くのには充分すぎた攻撃の隙間を縫ってクラウドはセフィロスに近づき、手にした剣を大きく振り上げるとセフィロスの身体を上空へと大きく打ち上げた。
それを追う様に飛び上がると、セフィロスの真下に入って剣を構えたまま上昇し、その全身に刃を叩き込む。
勿論、この程度の攻撃で倒せるほどセフィロスが容易い相手だなどとは思っていない。セフィロスから少し離れた位置に着地したクラウドは、振り返るとセフィロスが微かに傷を負いながらも相変わらず薄い笑みを浮かべたまま自分を見据えてしっかりと二本の脚で立っていることを見て取る。
次はどう動くべきか、考えている間にセフィロスは距離を詰めてくる。しまった、と思う間もなくセフィロスの太刀が振るわれ、目にも留まらぬ速さでその刃がクラウドを傷つけていく…!

「ぐっ…」

傷の痛みに眉を顰め、剣を握りなおしながらも刻まれた身体から滲む紅にちらりと目を移す。戦えないほどの傷ではないが、やはりその痛みは確実にクラウドの動きを鈍らせる。
その痛みを堪えるかのように立ち上がり、余裕の表情を浮かべてこちらに近づいてくるセフィロス。その笑顔は先ほどまでと何も変わっていないのに何処か不気味にすら見えて―

「…お前を…私の記憶へと変えてやろう」

振りかざした刀にはクラウドの身体からにじんでいるのと同じ紅が刻まれている。その凶刃が再びクラウドを傷つけんと振り下ろされようとした、その瞬間。

「クラウド!」

身近にあってそれでいて懐かしい、クラウドにとっては何よりも大切な声が頭上から響く。そしてその視界に―セフィロスめがけて鋭い蹴りを叩き込んだティファの姿が飛び込んできた。

「ティファ、お前…どうして!」

クラウドの問いには答えず、ティファはすぐに素早い動きで飛び退ってセフィロスから離れる。突然の攻撃に虚を突かれたかのように大地に叩き付けられよろめいているセフィロスの姿を見て取って…クラウドは決意したかのように剣をしっかりと握りなおした。
ティファがこの場に現れたことは解せないが、それでもこの隙を逃すほどクラウドは愚かではない。寧ろこの好機を逃せば後はない―自分に言い聞かせるように、クラウドはセフィロスとの距離を詰め、そして剣を大きく振りかぶった。

「はっ!」

剣を振るいながら前進し、剣身の重みとクラウドの力の全てを乗せた斬撃を叩き込む。文字を書くかのような攻撃に、セフィロスの身体は大きく吹き飛ばされて岩場にぶつかった。
ずるり、と重力に負けて岩からずり落ち、地面に膝をついたセフィロスを横目で見遣るとクラウドはそのままセフィロスに背中を向けた。

「あんたが俺を追うのはあんたの勝手だ。だが―俺はあんたにこれ以上振り回されたりはしない。俺を導くのは俺自身だ」

そのまま、少しずつ明るくなり始めた空の下を歩き出したクラウドの背後から聞こえる足音。それがセフィロスのものでないことはクラウドが一番良く分かっている。
振り返るとそこにあったのはティファの笑顔。それだけを確かめたクラウドはすぐに向き直って歩き出すが、暫く歩いたところで隣を歩くティファが口を開いた。


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