Chapter/16-2/4-






だが、そこで遠くから聞こえる足音にクラウドは一瞬身を固くする。自分が危惧していたことが起ころうとしているのか、それとも…
無意識のうちに剣に手をかけ、足音のした方へと…自分は足音を殺して進んでいく。
…そして、近づくに連れて気付く。この気配は自分も良く知ったもの…今狙われているのはライトニングではない。誰かが狙われているのだとすれば、それは寧ろ自分なのだと言うことに―
だが、だとすればなおのこと今の自分はここで退くわけにはいかない。この戦いの中、「彼」がどう動くのか予想できないからこそそれを見極めるのは自分に与えられた役割なのだ。
ゴルベーザもジェクトもクジャも、一度も「彼」の名を口にしたことはなかった―つまり彼は皇帝に与しているのか、それとも逆らっているのかが判断できない。軽率な判断をすれば仲間を危険に晒すことに繋がるだろう。
クラウドは自分が出来うることを考え、出来れば自分の直感が間違いであって欲しいと願いながら次第に近づいているのが自分でも分かる良く知った気配を追っていた。


「やはり来たか、クラウド」

やがて足音が止まっても気配は消えることはなく―その気配だけを追っていたクラウドの目の前にはたなびく銀色の髪と見慣れた黒いコート。
勘違いでもなんでもなかった。かつて彼に憧れその背中を追い続け、そして敵として相見えた―クラウドにとっては、どう足掻いても切り離すことが出来ない存在がそこにはいる。
剣に手をかけたまま、クラウドは真っ直ぐにその声の主―セフィロスを見据えていた。

「何をしに来た?」
「どうせお前も、この世界が形を変え繰り返している戦いにうんざりしているだろうと思っただけだ」

いつもの如く抜き身のままの長刀を構え、セフィロスはクラウドにじりじりと近づいてくる。間合いを保つように一歩一歩と後ずさりながら、クラウドとセフィロス…二人分の視線は冷たく火花を散らしている。
この場所は仲間達が休んでいる野営地から近い。セフィロスと戦う他ないのは分かっているが、あまり派手に動くと仲間に気付かれ、巻き込んでしまうかもしれない。頭の片隅でそんなことを考えながら、クラウドはセフィロスとの間合いを図っている。

「支配も調和も何もかも、私にとってはささいなことだ。私はこの世界に眠る『記憶』を探し、そしてお前を導くのみ」
「探すなら勝手に探せ…俺を巻き込むな」
「この世界がもしも『記憶』で構成されているとしたら―お前は私がこの世界に存在する意味、私の『記憶』を紐解く鍵になる」

セフィロスの言っていることがクラウドには半分も理解できない。だが、ひとつだけはっきり分かること、それは―セフィロスは、敵だ。
皇帝に従うつもりがないようではあるが、だからと言って自分たちに協力するつもりがあるわけでもない―寧ろ、彼が望んでいるのは自分と、クラウドと戦うことだけなのだとその言葉に悟る。
そこまで執着されていることに対して、うそ寒いものすら感じてしまう―無論、元の世界での彼の記憶を持っているのは自分だけだ。ティファはどうにも、クラウドのこと以外に関しては元の世界での記憶が曖昧なようであるし。
一体セフィロスの何がここまでさせると言うのだろうか―何が彼を、きっと今この世界にいる誰よりも元の世界へと執着させるのだろうか。その結果、自分に執着させると言うのだろうか…クラウドの中で考えがまとまることはない。
かつて憧れ、追い続けた存在。しかし今は逆に、自分がそうしていたのとは違う意味で自分を追う存在―何故そうなったのかすら分からない自分にはセフィロスのことはきっとずっと理解出来ないのかもしれない。
だが理解できなくとも、彼と戦うべきは己自身だと言うことをクラウドはとっくに分かっている。

「来い、クラウド。確かめてやろう―この世界で再び私とお前が相見えた意味を。そして再びお前を導いてやる」

言葉で説得しても無駄だということはクラウドはとっくに分かっている―ならば。
今までは引き離すようにじりじりと退いていたが、一度動きを止めるとクラウドは一気に間合いを詰めた。呼応するようにセフィロスの手の刀が妖しく光り、上段の構えに振りかぶられた刀が振り下ろされると共にセフィロスに駆け寄らんとしていたクラウドを剣圧が襲う―
それをすんでのところでかわすと、再びクラウドは構えの姿勢を取って手にした剣をセフィロスに向かって真っ直ぐに突き出した。だがセフィロスも負けてはいない―一歩後ろにステップすると再び刀を振りかざす。振るわれるたびに生じる真空の刃が真っ直ぐにクラウドへと向かって走り、その腕にざっくりと傷を刻む。
痛みにクラウドの表情が歪む。白み始めた空、明るくなりかけた風景の中その表情をはっきりと見て取ったのだろう。セフィロスの顔にはどこか嗜虐的にすら見える笑みが浮かんでいる―


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