Chapter/16-1/4-






ウォーリアオブライトの言葉を受け、明日は早いと皆が分かっているからだろう、仲間達は皆早々にテントへともぐりこむ。
勿論いつイミテーションの襲撃を受けるか分からないこの状況ではあまり心安らぐこともないのではあるが、だからと言って休まなければ戦い続けることもかなわない。
明日からは厳しい戦いになる事が予想される、それを想定した上で皆気持ちは落ち着かないまでも身体だけは休めておかなければならない。そのくらいのことは皆分かっているのだ―
勿論、全員が眠っている間に何かが起こっても良くない。皆が眠っている間は順番に見張りをする―ここまでは、皇帝の野望が明らかになるまでと何も変わっていない。
そして、空の端が微かに白み始める―もうすぐ、夜が明ける頃。…その時、見張りのために野営地の周りを歩いていたのはクラウドだった。
もうそろそろ、次の見回り当番が起き出してくる頃だろう。そんなことを頭の片隅で考えながら、自分の担当している時間帯に特に大きな出来事が起こったわけでないことにクラウドは心の中で密かに安堵していた。
やがて、クラウドの考えている通り―近づいてくる足音を聞きつけると歩いていた動きを止め、そちらに視線を送る。

「クラウド、交代の時間だ」

歩み寄ってきたライトニングに一瞥を送ると、クラウドは短くああ、と一言だけ返事をした…しかし、テントの方に戻るわけでもなく、ライトニングが向かっていこうとするのとは別の方向へ足を向けるだけ。
その行動に違和感を覚えたライトニングは微かに眉を顰め、戻るわけではなく立ち去るクラウドの背中に声をかけた。

「…どこへ行く?」
「今から眠るような気分にならないだけだ」

ぶっきらぼうにそれだけを答え、クラウドはそのまま足を進めるだけ―視線は感じるもののライトニングからそれ以上言葉が出ないのは、彼女だって自分に対して言っても無駄だということを分かっているからだろうか。
或いはそれを見越して、答える手を煩わせたくないと言うライトニングなりの優しさなのかもしれない―とも考えていた。無論こんなことを考え付く影には普段から散々「ライトは冷たく見えるけどああ見えて優しくて」と、口癖のようにフォローという名の惚気を繰り返しているフリオニールの発言の影響も少なからずあるだろうけれど。
いずれにせよここから眠る気にならないのは本当のことで、安全だと言えるような状況でないのもまた確かで。
それに、以前に一度ライトニングは見張りの最中に大怪我をしていたようなことがあった―それをティファが連れ帰ってきていたのをはっきりと覚えている。ティファは結局詳しいことを教えてはくれなかったが、「ライトはもしかしたら誰かに狙われてるのかもしれない」とだけ言っていた。
ティファの推測が正しいのだとするとライトニングが独りで見張りをしていて何かが起こることは否定しきれない―そうなると今度はフリオニールが平常心ではいられないだろうし、この戦いの中心に立つようにとウォーリアオブライトから厳命されている彼がその調子では仲間全体の士気に関わる。
無愛想だとか何を考えているのか分からないとか協調性がないとか時に散々な言われようをするクラウドではあるが、表面上そう見えているだけで彼は彼なりに仲間を思い行動している。
興味ない、と全てを斬って捨てるのは簡単かもしれない。だがクラウドだって仲間達のことは大切に思っている―言葉には、しないだけで。
…仲間達がクラウドに散々に言えるのはそれを分かっているからこその裏返しだということを、クラウドは知っていた。だからこそ言いたいように言わせているし、それでも自分は仲間のことを考えて動く。
それはかつての戦いから何も変わっていない…だがそれは分かっていても、クラウドの中にそれを素直に認めることが出来ない微かな「照れ」があるのもまた事実。

「俺らしくもないな」

自分しかいないその場所で、誰に対してなのかすら分からないまま呟いた照れ隠しの言葉は誰の耳にも届かないまま夜の静寂に消えていく…はずだった。


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