EXTRA:切願の先に-2/3-






「確かにありえないとは言えないな」

そうだとしたら、「彼女」は一体誰だったのだろう。何故殊更に「彼女」だけが気になるのだろう―何故か懐かしいと思ってしまうのだろう。
その心当たりすら自分の記憶の中には見つからなくて、何故だかその事実に妙な苛立ちすら感じたりして。
もしも自分たちの知らないところで「彼女」たちがこの世界に存在したのだとして、その記憶を自分が失っているだけだとして―それならば、「彼女」は自分にとって一体なんなのだろうか。

「なあ、ティーダ」
「ん?」
「お前が知っているって言うイミテーション…元々、お前にとってどんな存在だったんだ?」

聞かれたティーダは一度首を捻り、そしていつものように頭を掻いてみせた。
その表情に浮かんでいるのはかすかな「照れ」。気のせいだろうか、少し頬が紅らんでいる気すらする。

「あんまり良く覚えてないっスけど…オレはきっと、守らなきゃいけなかった。なんとなく、そんな気がする」
「きっとティーダにとっては大切な存在…だった、んだな」

ティーダの答えを聞いて、フリオニールはますます分からなくなった。
今目の前にいなくても記憶にとどめているほど大切な人―自分にとって「彼女」はそんな存在だったとでも言うのだろうか。
だとしたら何故、彼女に関する記憶が甦ってこないのだろう。ティーダがそうであるように、大切な存在だとすれば欠片くらいは残っていてもおかしくないはずなのに。
…そもそも、自分の性格を考えたとして…そう言う意味での「大切な存在」になりうる女性が果たして本当にいたのだろうかとそんなところから疑いたくもなる。
大体、仲間であるはずのティナと話す事に対しても時折戸惑いが生じるのだ。
男同士ならともかく、女性の考えることは自分たちとは全く違うから…何か変なことを言って怒らせはしないかと妙に緊張してしまうことがある。
その状況で、「大切な存在」なんてものを自分が作ることが出来たのだろうか?などとつい考えてしまう―
考えが全くまとまらないどころか、この方向で考えると不自然になる一方。
これ以上そんな前提で考えていても混乱するだけかもしれなかった―一度その考えを消そうと、フリオニールは首を横に振る。
そんなフリオニールを不思議そうに見ていたティーダではあったが、その肩を遠慮なくぽんぽんと叩いてみせた。

「まぁ、フリオニールもそのうち何か思いだすかもしれないっスよ。みんなちょっとずつ元の世界のこと思い出しかけてるみたいだし」
「元の世界で関わりがあったかどうかはわからないけどな。過去に仲間だった存在だとしたら同じ世界から来た存在とは限らないだろう」
「それはそうだけど、でもきっと…あのイミテーション、元はフリオニールの大切な人だったのかもしれないじゃないっスか。今のフリオニール見てるとどうもそう言うの苦手そうに見えるけど、そんな存在が全くいないとは言い切れないっスよ」

考えていて分からなくなりかけて一度投げ捨てた考えをティーダはあっさりと拾ってフリオニールに投げ返してきたものだから、その考えを簡単に捨て去ることはどうにもフリオニールには出来そうにもなくて。
だが、もしもそんな大切な存在だったのだとしたら…「彼女」を忘れてしまっていることに対して罪悪感がないわけでもなくて―
微かに頭が痛い。何かが思いだせそうな気がするのに、その記憶は靄でもかかったかのようにフリオニールの手の届かないところにあって。


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