EXTRA:切願の先に-1/3-






それは、13回目の神々の戦いの最中の出来事。
コスモスを喪った戦士達が、ただひたすらに…この世界の救済を目指して戦い続けていた頃の出来事。

仲間達は時折見つけるひずみを解放しながら進んでいる。
急いではいるものの、それぞれに因縁のあるものとの決着をつける必要があったり―未だ襲い来るイミテーションたちを討つ必要があったり。
もどかしく思いながらも、混沌の神カオスの玉座を目指し彼らはひたすらに進んでいた。
そして―先への道を急ぎながら並んで歩いていたフリオニールとティーダであったが不意に、ティーダが口を開く。

「この戦いが何回も続けられたもので、もしかしたら過去の戦いに…オレ達の知らない誰かがいたのかもしれないって話、こないだバッツがしてたじゃないっスか」
「ああ、それがどうした?」

そう言えばバッツがそんな話をしていた記憶がある。
誰の武器だか分からない武器を使いこなすことが出来る、それは自分が天才だからなのかと思っていたが…もしかしたら、ここにいない者たちも元々は仲間だったのかもしれない、と。
一見荒唐無稽にすら思える話であったが、仲間の技を真似しその武器すら呼び出して使うバッツが「知らない誰かの武器を使いその技を真似て戦う」と言う事を考えればその話にもさしたる不自然はない気がしていて。

「つまり、その…オレ達以外の他の誰かが、オレ達の為に何かを残してくれたんじゃないかって…時々思うんスよ」
「…他の誰か?」
「クリスタル探してる頃に言っただろ、イミテーションの中に知ってる子がいる…って話。この世界にいるわけないのになんでイミテーションが存在するんだろうってずっと思ってたけど、そう言うことなのかなって」

そう言えばティーダからそんな話を聞いたことがあった。
それに、クラウドも同じようなことを言っていた…記憶を試されている気がする、と。彼も、元の世界で見知っていた『誰か』をイミテーションたちの中に見つけていたのかもしれない。
そもそもが、フリオニールにだって身に覚えがあるのだ。
イミテーションはカオスの手先、自分たちにとっては敵…そのはずなのに何故か、懐かしさを感じることがあるあの薄紅色の人形―

「もしかしたらフリオニールもそうなんじゃないっスか」

丁度自分が考えていたのと同じ事をティーダに指摘されて、それが妙に気恥ずかしくてティーダのほうが見られない。
目を逸らしたまま、それでも…今考えていることを口にすることによって、頭の中に漠然とした形で広がっている記憶が少しでもまとまればと思いながらフリオニールは腕を組んだ。

「あのイミテーション…か」
「敵なのに嫌な感じがしないって言ってたけど、それ結局そう言うことじゃないんスか?まぁ、オレと違ってフリオニールは誰なのか思い出せないみたいっスけど」

そう、そこは確かに自分でも不自然だと思っていた。
ティーダやクラウドのように、イミテーションの姿を見てそれが誰なのかすぐに思い出すことは出来ない。
いくら自分は他の仲間に比べて元の世界の記憶が曖昧だとは言え、ティーダやクラウドの様子を見ている限り…元の世界で知っている「誰か」だったのならばそのことくらいは思い出せてもよさそうなものなのにその記憶が甦ることは全くない。
寧ろ、それなら何故あのイミテーションだけ他の物と異なりこんな奇妙な懐かしさを感じるのかその心当たりが全くなくて逆に戸惑いすら覚えてしまう。
だが、バッツが言っていたように、そして今ティーダが言っているように元々は仲間だったのかもしれない「誰か」があのイミテーションの元になったとしたら―?


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