消滅-2/3-
残されるのは、仲間達と…未だ生まれ出で続けるイミテーションのみ。
次元の扉を見遣り、ライトニングは仲間たちを見渡す。
「みんな、わかっているとは思う…私たちはあの次元の扉を壊すためにここに来た。それが私たちの最後の仕事だ」
仲間たちの表情は変わらない。覚悟を決めているのは自分だけではない…それだけでも十分に分かる。
だが敢えて、確かめる為にも…ライトニングは言葉を続けた。
「でも…イミテーションどもの中に飛び込めば、私たちはもう─」
もう一度仲間達を見渡す―誰の表情にも、迷いなどは微塵も感じられない。
「でも、そうするしかない…わかっているつもりです」
「オレも覚悟する時なんだろうな。勝つためなんだ、って」
「それで次に望みが繋がるんだから」
ユウナが、ヴァンが、ティファが…そう言ってライトニングに笑顔を返す。
その笑顔はこの状況にはどこか似つかわしくないようにすら感じるが…それでも、それぞれの覚悟をしっかりと物語っていて。
「みんな最初から覚悟してるさ。そんなにバカの集まりじゃないんだぜ?」
そう付け加えたラグナの笑顔もいつもどおり。
これから自分たちが向かう先がどこなのか、それを知らないわけではない…それでも笑顔が浮かぶ、それは今ここにいる仲間達と…残していく、希望を繋ぐ仲間達への信頼の成せる業。
「ここへ来たことは無駄にはなりません。次の戦いで誰かが救えます」
救いたい「誰か」がいる。
そのユウナの言葉は何よりも確かなものに思えて…それぞれの心にある覚悟と決意がそれぞれの胸のうちでまた鮮やかになる。
立ち止まるわけには行かない。仲間達の為にも。
「それじゃ、行っかー!」
ラグナがわざと明るくそう言ってみせたのは…誰かの希望のために絶望に向かう自分たちの心を少しでも明るくさせようとしているからか。
後悔はするな、彼はかつてそう言った―そして今のライトニングははっきりと言い切ることが出来た。自分に後悔などない、と。
そして―前へ進んでゆく仲間たちの背を見送ったところで、ライトニングの耳に届く足音。
振り返ればそこには、イミテーションを足止めするために残してきたはずのカインの姿があって。
「カイン!大丈夫か?」
「心配するな。まだ戦えるさ」
槍を支えにようやっと立ち上がった風情のカインを心配そうに見遣るライトニングだが…しかし、きっとここで自分がカインに戻れと言うことは出来ない。
彼の中にもまた、自分と同じ決意があるのだと知っているから。
「行くぞライトニング。援護してやる─前へ進め」
そう言うや否や、傷ついた身体でイミテーションのほうへと向かっていくカイン…
その背を、そして前を進む仲間たちをじっと見据えてライトニングはもう一度だけ目を閉じる。
自分の中にある「記憶」の全てを確かめ、そして心の中だけでその記憶に別れを告げる。
残していく仲間たちに。そして―
目を開けたライトニングには、ひとかけらの迷いすら存在しなかった。
「…前だけ、見てろ」
自分に言い聞かせるようにそう呟いてライトニングもまた仲間たちの背を追って走り始めた―