切願-3/3-






残していく者を想いながらそれでも揺らがないユウナを見てライトニングはようやっと分かった気がしていた。
ユウナのように仲間への想いと愛するものへの想いを両方とも抱いてなお進んでいくという選択肢もあったのだということを。
仲間達の為に、自分ひとりが勝手に抱いていた愛情を断ち切ることなどないのだと言うことを。
自分勝手に愛してその想いを断ち切ることが、余計に彼を傷つけてしまうのだと言うことを。
無理はしていない、迷っているつもりもなかった―だが、それでも。

「…ライトがその人のために道をつくる。わたしがティーダのためにそうするように。そしてその道を、残していく人たちが歩いていく。そこに残る想いは無駄にならない」
「…ユウナ」
「それはティーダのためでもあり、ライトの大切な人のためでもある。そして他の仲間達の為でもある…全部大切にしちゃいけないなんてことはないんです、きっと」

ユウナの微笑みが、固く閉ざしかけていたライトニングの心を溶かしてゆく。
資格がないなんてことはない。愛してはいけないなんてことはなくて…
彼を傷つけてしまった、彼に忘れ去られてしまう存在ではあっても自分は自分の想いを抱き続けていていいんだと、何故か…赦されたような、そんな気がして。
例え自分の存在がそこに残らないとしても、自分の「想い」は彼のために残り続ける…
自分ひとりでは決して考え付かなかったかもしれないその事実に気付いて、ライトニングは不意に目を閉じた。

「…ありがとう、ユウナ…少し楽になった気がする」
「私も思うままに言っただけですけど…でも私はそれが正しいって信じてるから…」

そして今度はユウナが一度目を閉じ、もう一度視線をライトニングに向ける。
その表情はこんなときだというのにどこか明るい。
消滅が待っていたとしてもその先には希望があるということを彼女は信じていて…ライトニングもまたその、ユウナの言葉にその事実を信じたいという想いを強くしていたから。

「それにもしかしたら」
「ん?」

そこで話は終わりかと思っていたが、ユウナが穏やかな笑顔のままで言葉を繋いだのでライトニングは再びそちらを見遣る。
ユウナはどこか遠くを見るような視線のままでぽつりと呟いた。
その表情はまるで…夢を見ているかのようなもので…

「ティーダと一緒に歩くのはライトが歩いていって欲しいと思っている人かもしれない…なんて考えたら、ちょっと素敵だなって思いました」
「流石にそんな良く出来た話があるわけないだろう」

今までの話とは違う…流石にご都合が過ぎるように思えるその言葉にライトニングの側にも笑いが零れ、ユウナも小さくそうですよね、なんて返す。
しかしライトニングは心の中だけで小さく…本当に小さく、願っていた。
今はカオスに与しているとは言え、目を覚ましたときにはもしかしたら…奇跡が起こっているかもしれない。
だから。

―会ったことがない人間に託すのもおかしな話だとは思うが、ユウナがそこまで信じているなら私も信じてもいいと思えるから…だから。

もう、側にはいられない。それでも進むしかない。
だから、どうかこの世界に残る「彼」には…少しでも恵まれた状況に、ひとつでも支えの多い状況にいて欲しかった。
今自分たちが、ここにいる仲間達に支えられているように。
だから今のライトニングはただ願うしかなかった。

―もしもあいつと…フリオニールと仲間として出会ったとしたら…仲間として、あいつを支えて欲しい…私の分まで…


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