切願-2/3-
その様子を見てティファが一瞬不思議そうな表情を浮かべたが、ライトニングの様子に気付いたのか彼女自身も歩幅を落とし後ろを歩いていたラグナやヴァンと合流したようだった。
ユウナに話がある、それをティファが理解してくれたのがとてもありがたく思える。
この話をティファが聞いたら、そしてその裏にあるものを悟ってしまったらティファは自分にも言うだろう、残ればいいと。
しかし勿論自分にはそんなつもりはさらさらなく、答えの分かっている質問を敢えてさせてしまうような気を今更使わせたくはなかった…から。
「なあ、ユウナ」
隣に並んだところでライトニングはそう声をかける。
声をかけられたユウナはライトニングを見上げながら小さく首を傾げてみせた。
「はい」
「…私たちの作る道はきっといつか…あいつらの道に繋がる、よな」
ライトニングのその言葉を聞いてユウナは傾げた首を元に戻し…それから一度反芻するようにユウナは目を閉じ、力強く頷いた。
彼女の中には、ライトニングの質問に対して否定など一切存在しないかのように、はっきりと。
「わたしはそう信じています」
「…ああ、それならばそれでいい…それで、いいんだ」
例えこの身が消滅しようとも、そこに残った「想い」が彼らのための道となるのであれば。
今ここにいる仲間たちだけでなく、その事実すらも…残った仲間たちの存在すらもまたライトニングにとってはひとつの心の支えとなる―その想いを新たにしながら。
そんなライトニングをじっと見つめていたユウナだったが、その横顔を見つめたまま小さく呟いた。
「詳しくは聞きませんけど…ライトにも、あなたのつくった道を進んでほしい誰かがいる…んですね」
…ユウナが気付いたのは、いみじくもライトニングと同じ…彼女自身が作った道を歩いて欲しいと願っている存在がいるからだろう。
自分自身は会っていないのでどんな人間か知る余地もないが、ユウナがそれほどまでに想う男だ…きっと、悪い奴ではない、のだろう。
きっと…「あいつ」と同じように。
無意識にそう考えていたがライトニングはすぐに首を横に振る。もう思い出さない、そう決めたのだから。
「私は…そんな想いなどもう断ち切った。今の私にはもうあいつを愛している資格などない…からな」
ユウナに答えるように、そして自分自身に確かめるように呟かれたライトニングの言葉に…今度はユウナが首を横に振ってライトニングの肩に手を置いた。
そして諭すような優しい声がライトニングの耳に届く―それは丁度あの時と同じように。ひとりで抱え込むなと自分を諭した時と同じように。
「…資格がないなんてことはない…ライトはその人を愛していていいと思います」
「ユウナ」
そこで名を呼んだのはその話をやめさせたかったからなのか、それとも―
勿論どちらにしてもユウナが話を止める気配はなく、ひとつ目を閉じて更に言葉を繋ぐ。
「…仲間みんなの為ではあるけれど、でも『その人のため』であってもいい―わたしが、みんなのためでもあるけれどティーダのためでもあるって思っているのと同じように」
ユウナの瞳は真っ直ぐで。
無理をしていたつもりなどなかったがやはり―どこかで忘れたくないと願っていた自分の存在を思い出す。
仲間達の為であり、愛する者の為でもある…そう言い切れるユウナが今のライトニングには眩しくて。