切願-1/3-






少しずつ、少しずつ。
感じる敵意、混沌の気配は強くなっていっている…相応に道に迷ったりもしていたのでそれなりに時間はかかったが。
それでもライトニングたちは確実に、次元の扉に近づいていた。
その最中、ライトニングは思っていた…今の自分は確実に、共にいる仲間達に支えられている、と。

そしてその最中、イミテーションの大群が聖域を襲っているとエクスデスに聞かされ―
そのエクスデス達の手を止める為にカインを残して、それでもライトニングたちはまだ先へと進む。
終わりの見えない、もしかしたら終わる時には自分たちの存在すら消滅するかもしれない戦いの道を突き進んでゆく―

そして。
次元の扉まであと少し…彼らがなんとなくそう思い始めたとき、ユウナが不意に口を開いた。

「解放されたひずみで眠っている人も…目が覚めたら、元気に戦えますよね」

その表情にはどこか寂しさにも似た何かが浮かんでいる。
自分はその現場にはいなかったが、ラグナやヴァンから話は聞いていた…ライトニングはユウナのその表情の奥にあるものに気付き、そちらに視線を向けて問いかける。

「倒れて眠ったままのカオスの戦士のことか?」

ユウナは何も答えない。しかしそれが既に答えとなっている…
ユウナの一歩後ろを歩いていたティファが不意にそんなユウナの肩を叩く。

「ねえユウナ…ユウナは残ったら?だって守りたい人がいるのよね?」

ユウナはティファのその言葉に顔を上げ、そちらの方を見る。
ユウナに笑いかけるティファの表情は…心配させまいと、どこか無理しているようにすら見えて。
勿論この、先の見えない戦いの中でユウナがいてくれれば。
自分に対して、仲間と一緒に戦えばいいと教えてくれたユウナの存在が近くにあればそれだけで心強いと言う想いはある。
しかしながら、ユウナにとってそれが「心残り」になるのであれば…
勿論ライトニングにも分かっている。今自分はきっと、ティファと同じような表情を浮かべていることくらいは。

「ユウナの記憶は元の世界のもの…眠ってもユウナはその人のこと、忘れないよ」
「でもわたし─」
「無理に行くことはない。大事な奴なら…そばにいてやれ」

一瞬、ほんの一瞬だけ。
忘れようとしていた姿がライトニングの胸を過ぎる。
今の自分が…何よりも大事な存在への未練を全て断ち切った自分がこんなことを言うというのもおかしな話だと心の中だけでそう思いながら。
だが…自分はともかく、ユウナにもそれを強要することはライトニングには出来ない。
しかし、ユウナは力強く首を横に振った。

「ううん…わたしは─わたしが出来ることをするだけ。ジェクトさんとティーダが未来で戦いを終わらせるように戦うだけ」

ライトニングの脳裡に次に過ぎったのはカインの言葉…だった。

―無理はするなと言いたいところだが全く無理をしていなさそうだな…

ああ、なるほど。あの時カインが見ていた自分の表情はこんな感じだったのか。
今のユウナを見ているだけで妙に納得して、ライトニングはこういう状況でありながらそれがふとおかしくなる。
そんなライトニングの考えなど全く知らないユウナは気丈に言い切ってみせる―その表情はどこか頼もしくもあって。

「二人は強いから大丈夫!彼らを信じて、わたしはわたしの道を進みます」

色の異なる双眸に、もう迷いは感じられない。
そのユウナの姿が一瞬自分と重なった気がして…ライトニングは少し歩幅を遅らせ、ユウナの隣に並んだ。


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