覚悟-2/3-






「お前が真実を追い始めなかったらきっと、私たちはここから抜け出せなかった…それは感謝している」

視線だけを動かして昏い空を見上げる。雲に覆われたその空が晴れる日は来るのだろうか。
いや、その日はきっと来る。残してゆく仲間たちがきっと…自分はそれを見ることも叶わないだろうが、それでもひとつの「繰り返し」を断ち切る力となれるのならそれでいい。そんな気がしていた。
あの時カインに素直に倒されていればその空を自分も見ることが出来たのかもしれないが…だが、自分にそんなことが出来るわけがないこともライトニングは充分によく分かっている。
残していく仲間たちが弱いわけではない。だが、自分には守られたまま戦いの終わりを迎えることなんて到底出来ない。

「だが、勝手に人を巻き込もうとしたことを許すつもりはない」
「厳しいな」

冗談めかしてそう言ったカインの言葉には答えない。
その代わりに、はっきりと言ってやった…この先へと向かう自分の決意が揺らがないことをはっきりと示すように。

「この先に続くのは苦しい戦いだけだ。その分、せいぜいしっかり働けよ」
「任せておけ」

カインはその短い言葉と共に踵を返し、他の仲間の元へ足を向け…しかし、もう一度振り返ってライトニングを見据えた。

「そうだ…もうひとつ、言っておかなければならないことを忘れるところだった」
「言っておかなければならないこと…だと」

自分の方は話が終わっているのにカインが急にそんなことを言い出し、ライトニングの眉根が寄る。
今この状況でこれ以上何を話すことがあると言うのだろうか…
先を急ぐべきだとも思うがわざわざ行きかけて足を止めるほどだから余程大事な話であるような気もする。
聞いておくべきか、後にしろと言うべきか…そんな迷いを浮かべた表情を見て、カインは少し言葉を出すのを躊躇うように間を置き…それでもはっきりと口を開いた。

「フリオニールのことなんだが」
「…別に今、あいつ一人のことを取り立てて話題にする必要があるとは思えないが」

聞こえてきた名前にライトニングは反射的にカインに背中を向けていた。
何故今、この場でその名前が出て来るというのだろうか―何故だろう、カインの方が見られない。
背後のカインから聞こえてきたのは溜め息と、そしてその後一瞬の間があって―言葉は静かに繋がれていく。

「お前がそう言うならそれでも構わない…だがフリオニールは最後にお前を呼んでいた。『ライト、ごめん』と」

カインのその言葉に呼吸が止まりそうになった。
どうして謝るのか…そんなものはフリオニールの性格を考えればすぐに分かる。あの約束を守れなくなってしまうから―
傷つきながら、倒れそうになりながら最後まであの約束を気にかけていたと言うのだろうか…自分の選択はそうして、彼に余計な罪の意識を背負わせてしまったと言うのだろうか。
カインに背中を向けたままライトニングは唇を噛む。
振り返らないライトニングに対して、カインは言うのを躊躇うように暫し押し黙っていたがそれでもようやっと、付け加えるように一言呟いた。

「それに…俺の聞き間違いでなければ、『愛してる』…と」

答えられない。カインの言葉に返すべき言葉がライトニングには見つからない。
唇を噛む力が強くなる…それこそ、そろそろ血が滲みそうなほどに。


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