詫言-2/3-






そんなやり取りを終えたところでようやく鎧を着込み終え、夜の間包まっていたマントを普段どおり装着しなおす。
ところどころに汚れがついているが戦いの中でマントが汚れるなど日常茶飯事なので別にそこは気にしなくていいだろう…一部の汚れの「正体」をカインが気にするとも思えなかったし。

「待たせて悪いな、行こうかカイン」
「ああ」

短くそう返して先に廃屋を出て行ったカインの後を追い、フリオニールは小走りで駆け出した。
何も…カインの考えていることも、ライトニングがついた嘘のことも知らないままに。

それからどのくらい歩いただろうか。
イミテーションと戦い、ひずみを抜け、カインについてフリオニールも歩いていた。
途中話していたのは他愛のないことばかりだったが、ふと気になってフリオニールは真面目な顔で口を開く。

「そう言えばカイン、目的の場所ってどこなんだ?」
「着いたら話すさ」

カインは短くそう答える…時折何か言いたそうにフリオニールの様子を窺っているような気がするのはフリオニールの気のせいだろうか。
それにしても、皆いつの間にか「目的の場所」なんてのを見つけているという事実には恐れ入る。
カインもそうだし、ライトニングも…ラグナが先導すると言っていたのでもしかしたら見つけたのはラグナだろうか、とふと思い、自分はそう言えば何も見つけだせていないのではないかとふと振り返りほんの少し自分が情けなくなったりもする。

「…どうしたフリオニール、妙な顔して」

それが顔に出ていたのか、カインがふとそんな風に尋ねてきた。
今の考えが見抜かれたようなそんな気がして…フリオニールは後頭部に手をやりながらひとつ息を吐き、誤魔化すように笑ってみせる。

「いや、カインは目的の場所ってのをちゃんと見つけてるんだなと思って。俺、まだ何も出来てない気がするからさ」
「お前の成すべきことは今じゃなくてもっと後に見つかるだろう。そんなに焦る必要はない」

諭すようなカインのその落ち着いた声に、フリオニールはどこか安心したようにひとつ頷いた。

「そうだよな。俺にも何か出来ることがあるはずなんだ」
「ああ…そしてそれはきっと、俺には出来ないこと…だからな」

そのカインの声がこころなしか寂しそうに聞こえたのは気のせいだろうか。
今何も出来ていない自分には出来て、目的の場所をきちんと探し出してきたカインに出来ないこと…それがフリオニールの中ではどうにも繋がらない。
それに、自分に出来ることがあるのなら他の仲間にも、きっと。それは勿論、目の前にいるカインにも。

「…俺もまだよく分かんないけどさ、カインにはカインの出来ることがきっとあるはずだし。励まされた俺がこんなこと言うの変かもしれないけど、そんな気にするなよ」
「お前は…純粋だな。うらやましくなるくらいに」

カインのその呟きは自分に向けられていたようでいて、その実何故か自分には向いていないのではないか。フリオニールは何故かそんなことを考えていた。
何故かカインが違うことを考えていた…ような。
どうしてそんなことを思ったのか自分でも分からないが、その時のカインには確かに何か…フリオニールにしかわからない違和感があった。
しかし、一瞬感じたその違和感は…カインが足を止めたことによってすぐに消え去る―いや、見えなくなる、と言った方が正しい…だろうか。


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