詫言-1/3-






ライトニングが去った後、フリオニールは前夜のことを思い出してひとり赤面したり胸を高鳴らせたりしていた。
耳に甦るのはライトニングの言葉の数々。
嘘でも冗談でもなんでもなく―愛してる、と。私はお前のものだ、とライトニングははっきりとそう言った。
…ライトニングのことを好きだと自覚してからずっと彼女を見ていた。
そんなことはありえないと頭から思い込んでいたが故に彼女の自分への想いには全く気付かなかったが、嘘や冗談でそんなことを言える人間でないことくらいは理解しているつもりだ。
それに、ライトニングに愛情もない相手に身を任せるようなことが出来るような器用さがあるとも思えない。
この戦いが終わる時には離れることになる運命なのは分かっている、だがそれでも…いや、それだからこそこの戦いを早く終わらせなければならない。
戦いの終わりに待ち受けているものが別れだとしても、この戦いが続くことで彼女の身に危険が及ぶことだけは避けたかったから。

―あんなに傷ついた仲間を見るのは嫌なんだ、だからつい厳しい言い方になってしまった。

今にして思えば彼女のあの発言の裏に隠されていたのは今の自分の気持ちと同じものなのだろうか。
全てが一本の糸で繋がったように思えて、フリオニールは一度瞼を閉じその裏側にライトニングの姿を呼び起こす。

「やっぱり無理を言ってでも一緒に行けばよかったかな」

側にいれば自分がライトニングを守れたかもしれない。
ライトニングに危機が迫った時、ほんの少しでもそれを遠ざけることが出来たかもしれない。
だが、ライトニングの側がそれを望んでいないのに無理を言うなんて事はフリオニールには出来ない。
それに、彼女は自分に守られるまでもない程度には強い、それは自分だって良く知っている。
だから大丈夫、と自分に言い聞かせながらフリオニールは脱いだまま置いておいた鎧を身に纏いはじめる。
…その時に耳に聞こえる足音―足音そのものに金属音が混じって聞こえるのでライトニングが戻ってきたわけではなさそうだ。
味方の誰かであれば問題はないがイミテーションだったりしたら、そう思ったフリオニールが鎧を纏う手が少しずつ早まる…

「…フリオニールか?こんなところにいたのか」
「カイン!探したんだぞ」

随分な言い草だとは自分でも思うが、それでも自分がライトニングと会うまではカインを探していたのは紛れもない事実。

「それはこっちの台詞だ…もっとも、夜の間は動くことはないだろうと思っていたが、ちゃっかりこんな廃屋まで見つけてるとは流石に思わなかった」

…見つけたのはライトニングではあるのだがそれは今カインに言うべきではないだろう。
と言うより、カインが来るのがあと少し早かったらカインとライトニングが鉢合わせしていたかもしれない。その状況をどう説明したものかと想像しただけで、カインが来たのが今でよかったとフリオニールの背中にはかすかに汗が伝うのであった。

「何にせよ、無事でよかった。鎧を着終わったら行くぞ、目的の場所はこの近くだ」

カインはフリオニールが無事であったことを心底安心しているようだった。
そして、その先へと進むことを少し急いでいるようにすら感じられる。
カインひとりでは手に負えない敵でも潜んでいるのだろうか、しかしそんな敵がいたとして自分がどこまで出来るか…フリオニールにはそれもよく分からない。

「とりあえず、俺の力が必要って事でいいのか?」
「ああ、そうだな。お前の力がどうしても必要なんだ…この戦いを終わらせる、その為に」
「それはちょっと大袈裟じゃないか」

カインが真面目な口調で言った言葉が逆に冗談のように聞こえてフリオニールは小さく笑う。
フリオニールのその反応を見てカインは何も言わず…小さく笑みを返したのみであった。


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