邂逅-2/2-






「かわせるか?」

剣からの攻撃かと身構えていたフリオニールに向かって銃弾が飛ぶ。それは予想すらしていなかったのか、今度はフリオニールがバランスを崩す番だった―
しかしフリオニールも負けてはいない、そこから再び体制を立て直す。

「なかなかやるようだな」
「そっちこそな。これなら手加減なしでやりあえそうだ」

言葉とともにかわしあった不敵な笑み、2人とも武器を構え直し…そして再び、間合いを計り始めた。

どれほどそうやって戦っていたか、2人ともはっきりとは記憶していない。
打てばかわし、翻した身から更に攻撃を繰り出す。
深手は負わないまでも本気で戦っている、いつしかライトニングはそれが楽しいと思い始めていた。
それはどうやら相手も同じらしく…自分が放った魔法をかわしたフリオニールの表情には何故か笑顔が浮かんでいた。
 ―信頼に足るか確かめてみろー
その言葉は決して虚勢でもなんでもなく。
彼の言葉をそのまま借りるとするならば…この男は信頼に値する。
だが、だからこそ。

「手加減をするわけにはいかない!」

剣を振り上げ、雷を呼ぶ。
この男ならこの程度悠々とかわしてしまうのだろう…

「ちょ!お前たちなーにやってんだ!」

聞こえた声に気を取られ、魔法のコントロールが乱れる。
結果、ライトニングが放った雷は声の主…ラグナの頭上へ。

「ラグナ!」

同じように声に振り返って、ラグナに攻撃が直撃したのに気付いたのかフリオニールはそちらへ駆け寄っていく。
そして、ライトニングも同じように。
…ライトニングが駆け寄った時には既に、まともに雷を食らったラグナをフリオニールが助け起こしているところで…
ライトニングの気配に気がついて振り返ったフリオニールと目が合い、2人は先ほどまでとは違う、言葉にするとしたらただただ「気まずい」としか言いようのない苦笑いをかわしたのであった。

「…理由は解った。しかしそれなら2人だけで完結するのが筋だろう。どこにラグナを巻き込む必要があった?」

聖域の片隅。
困ったような表情で2人を見つめているコスモスの前に腕組みをして2人に説教をする体制に入ったウォーリアオブライトと、なんとなく2人揃って正座してその説教を拝聴しているライトニングとフリオニールの姿がそこにはあった。
ついでに、コスモスの隣には巻き添えを食らった張本人であるラグナの姿。

「何度も言っているだろう、ラグナが急に声をかけるから魔法の制御が狂っただけだ」
「ライトニングは何も悪くない、多分俺も攻撃しようとしているところだったら間違いなくラグナに直撃させていた」
「いや、その庇い方おかしいよなフリオニール君。別に俺怒ってるわけじゃないけどその庇い方はおかしいよな」

口を挟んだ張本人のラグナ、口調とは裏腹にその表情はどこか楽しそうですらある。
ラグナはラグナなりに場の空気を和ませようとしているのかもしれない。若干空回ってはいるが。
その発言が功を奏したのか…怒っていないという発言を信じたのかそれとも呆れたのかはさておき、ウォーリアオブライトはひとつ息を吐いて肩をすくめた。

「とにかく。…考えがあってやっていることだというのは解ったが、他の仲間を巻き込んだり不安にさせたりするようなことは今後謹んで貰おう。
 それとライトニング、こういうケースであれば仲間と戦うなとは言わないがもう少し手加減と言うものを覚えるようにするんだ」

それだけ言い残してウォーリアオブライトは踵を返した。
調和の神の戦士たちを取りまとめるものとして、他にもやることがあるのであろう。
それと同時に、フリオニールとライトニングは互いの顔を見合わせる。
…そして、フリオニールの表情に笑顔が浮かんだ。

「あの人を怒らせないように気をつけたほうがいいな」
「…すまなかった」

ライトニングの言葉はフリオニールが発した言葉の返答にはなっていない。
しかしフリオニールはその言葉の意味するところを悟ったのか首を横に振って見せた。

「俺も手加減なしだったからな。君だけが悪いわけじゃない」
「しかし、戦えと言ったのは私だ。それに」
「気にするな。俺はもう気にしないから。それに」

そのままフリオニールは立ち上がり、ライトニングの瞳を真っ直ぐに見据える。

「結構楽しかったしな」
「ああ…そうだな」

あの戦いを楽しんでいたのは自分だけではなかった。
それが解って、ライトニングは少しだけ表情を緩めた。
その笑顔にフリオニールも同じように笑顔を向ける。

「解ったことは…お前はある程度は信頼に値する、と言うことだ」
「ある程度、か。まあ、今はそれでいいとするか」

その言葉を残し、フリオニールは歩き始めた。
セシルと約束があった、なんて小さな声で呟きながら。

「…いーい男だな」

去っていくフリオニールの背中をぼんやりと眺めていたライトニングをからかうようにラグナがそう声をかける。

「少なくとも、お前よりはな」
「おーおー、意外と手厳しいなー」

自分も立ち上がったライトニングはラグナのそんな笑い声を背に、フリオニールが歩いていったのとは別の方向に歩き始めた。
冷たくあしらった仲間達に、悪かったと伝える為に。



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