相愛-side/L- -4/5-






「フリオニール」

自分でも、どうかしているとしか思えない。
ああ、まさにその通りだ。
そうでなければ、こんなことを口に出来るわけがない。

「…どうした」
「私を…」

それでも―これが、最後なのだから。
元より、離れる前に全てを打ち明けるつもりだった。こんな形で離れることになるなんて想像もしていなかったが…
それでも…これが最後だと知っているからこそ。
刻み付けたかった。フリオニールの全てを、自分に―

「私を、抱いてくれ」
「…え?」

フリオニールの目が大きく見開かれ、その視線がライトニングの視線と再び真っ直ぐにぶつかり合う。
それは丁度初めて出会ったときと―自分と戦えと告げたあの時と同じように。

「聞こえなかったのか?私を抱いてくれと言ったんだ」

一度言ってしまえば何も躊躇うこともないその言葉を繰り返し。
呆然と自分を見つめるフリオニールの瞳をしっかりと見つめ返し。

「きゅ、急に何を…ライト、冗談は程々に」
「これが冗談を言っている顔に見えるか」

まるで金魚のように口をパクパクと動かすフリオニール。きっと、言葉が声になって出てこないのだろう。
ライトニングは黙ってそんなフリオニールを見つめている。
ゴクッ…とフリオニールが喉を鳴らす音が部屋の中に響いた。
そして自分が立てたその音に驚いたようにフリオニールは首を横に激しく振る。

「違う、違うだろ俺…あ、ああえーと…あ、ああそうか!」

ようやく声が出たかと思ったらそんなことをまくし立て、フリオニールの両腕がライトニングの背中に回される。
その身にまとった鎧の冷たさが服越しに伝わってきて、それ以上に…背中に回された腕の熱がライトニングの中の「何か」に火をつける。
誰よりも愛しい人にこうして抱きしめられることがこんなに幸せだと初めて知った―
この戦いを終わらせる為に自分のできることをする、そう決意したにも関わらずずっと欠けていた「何か」が満たされていくのを感じる。
だが、足りない。今のライトニングにはまだ…フリオニールが足りない。

「こ、こういうことで…いいんだよな?」
「…いいわけないだろう、この朴念仁」

押し返すように一旦フリオニールから身体を離し、ライトニングは右手をフリオニールの後頭部に回す。
そしてそのまま引き寄せて―唇を、重ねた。
暖かい唇の感触。ライトニングの中に点った火が少しずつ大きくなる…
愛している。自分は間違いなくフリオニールを愛している…!
一方のフリオニールは完全に動きを止めてしまっている―ライトニングには別にそんな魔法を使った記憶はないのだが。
だが、ライトニングにとっては好都合だった。
重なった唇を離したくない。伝わってくるぬくもりがそんな欲求をライトニングの中に植えつけていたから。

フリオニールが小さく身じろぎしたことでライトニングは右手の力を緩め、長い長い口付けはそこで途切れる…どうやらその間中ずっと目を見開いていたままだったらしいフリオニールの視線はただ困惑のみに彩られている。

「ライト…何で…」

この状況で、何故「何で」なんて事が聞けるんだろうか。
いくらなんでも口付けを交わすことの意味すら知らないほど初心だとは思いたくないのだが、と思いつつライトニングはひとつ息を吐いた。


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