相愛-side/F- -1/5-






これだけ人数がいれば仲間とはぐれることなんてのは割と日常茶飯事であるわけで…
しかし、2人だけで行動していたのにはぐれるというのはどういう状況なのだろうか。
簡単に言えば、それぞれが別のイミテーションと戦っている合間に距離が離れすぎてしまいそのまま互いの所在がつかめなくなってしまったと言うだけの話ではあるのだが。

「全く。カインのヤツどこへ行ったんだ」

恐らくはカインの方も同じことを考えているであろうが、とりあえずイミテーションが徘徊するこのあたりで長く1人でいることは得策ではない。
フリオニールもそれは解っている…のだが、しかし太陽は既に西の方向へ傾き始めている。
現状1人と言うだけでも相当危険ではあるが、もしも日が暮れてしまえば…
イミテーションだけでなく、いつカオスの戦士たちと出くわすかもわからない。
それならばカインといち早く合流した方がいいのだろうが、恐らくお互いがお互いを探し回っている為すぐに合流するというわけには行かないだろう。
はぐれた時はその場でじっとして探しに来るのを待つのが鉄則だと言うことを完全に忘れていたフリオニールの落ち度ではあるが、元いた場所に戻ってもカインがいなかったことを考えるとカインも同じようにその鉄則をすっかり忘れ去っているようなので後から文句を言われることもないだろう。
そんなことをぼんやり考えながらも足だけは普段よりも速く動かし、一刻も早くカインと合流しようと考えていた…その、時に。

「…フリオニール…っ…!!」

聞きなれたその声に急いで振り返る。
勿論自分が彼女の声を聞き間違えるなどと言うことはありえないわけで、当然そこには声を聞いてすぐに想像がついた顔…ライトニングがいた。
確かライトニングはラグナやヴァンと一緒に行動していたように思ったが何故その彼女がここに1人でいるのだろう?
そんなことが少しだけ頭を駆け巡ったが、恐らくライトニングは自分に対しても同じことを考えているであろうと思って口に出すのは辞めた。
その代わりに笑顔を向けると、ライトニングはそのまま自分に近づいてきて右腕を掴む。
掴まれた右腕の力はフリオニールが思うよりも強く、それでいて…どこか優しさを感じさせる。
強さと、隠れた優しさ。ライトはそう言う奴だったな、とフリオニールはどこか場違いとも言えるようなことを考えていた。

「どうしたんだライト、君もひとりなのか?」
「ああ、いや…さっきまでユウナ達と一緒だったんだが」

だが、の後に続く言葉は恐らく自分の状況と同じだろうとなんとなく想像がつく。
しかしそれにしても、何故ジェクトと一緒に行動していたはずのユウナの名前がそこで出てくるのか…彼女のことだ、聞いても恐らくは答えてはくれないだろう。

「なんだ、そっちもはぐれたのか」
「そっち『も』…?」

怪訝そうなライトニングの言葉に、自分の言葉が失言であったことに気付くが取り繕うのもおかしな話だ。
多分表情に出てしまっているだろうな、と思いながらフリオニールは頬をかく。

「俺はさっきまでカインと一緒だったんだがちょっと目を離したすきに、な」

カインと一緒、と聞いたライトニングの表情が変わったように見えたのはフリオニールの気のせいか―それとも。
しかし、気のせいでなかったとしてもそこで表情が変わる理由がフリオニールには思い浮かばない。
精々あったとして、カインに何か用でもあったとかその程度のことだろうと思いながらフリオニールは話を続ける。

「そんなわけでカインを探していたんだがもうすぐ日が暮れるし、どうしたものかなと思っていたんだ」

首を竦めながら西の空に目をやる。太陽はもうすっかり傾きかけて色を変え―もうまもなく夜が訪れることをその空が告げている。

「…どこかで夜を明かすしかないだろうな。イミテーションに襲われるのも問題だが、夜になると獣の類も出てくるだろうし」

意外と冷静なライトニングのその言葉に頷きかけるが、しかしよく考えれば仲間とはぐれたという彼女は今ひとりだ。
そして、カインとはぐれた自分も。
ここでライトニングをひとりにしていいのだろうか、答えは否。
そこまで考えはしたが、だからと言って…2人で夜を明かすと提案するのは流石にフリオニールには出来なかった。
仮にも男と女、勿論自分に何かするような度胸があるとは思っていないがそれでも万が一と言うことがある。
他の仲間であれば一切気にするような状況ではないが相手はライトニングだ。
想いを寄せている相手と2人、一夜を過ごす…そんな状況に追い込まれたら自分がどうなってしまうか解らない。

「夜を明かすったって、ひとりじゃ…」
「誰がひとりで夜を明かすと言った」

ライトニングが自分の腕を掴んだ力が強くなった気がした。
そしてそのまま、強く掴んだ腕は同じように力強く引っ張られる。


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