予感-3/3-






「ところで、お前はひとりで行くのか?」
「暫くはそのつもりでいる。状況が分からないからな…誰かと合流できそうならそうするさ」
「そうか。私はラグナとヴァンに誘われていてな…ひとりで行くとなると何かあっても手助けできる者がいない可能性もある。気をつけるんだぞ、フリオニール」

先ほど彼が自分にそうしたように、今度は自分がフリオニールの肩に手を置いてみせる。
フリオニールはそれに対してしっかりと頷く。

「君も気をつけるんだぞ、ライト。まあ、ラグナやヴァンが一緒って言うんなら大丈夫だと思うけど」
「そうだな。次に会う時には…この戦いの終わりが少しでも近づいていればいい」
「ああ。それまで…頑張ろうな、お互い」

にこりと笑顔を返し、フリオニールは聖域の外へ向かって歩き始めた。
その足取りは強く、頼もしい。きっと彼は彼で歩みを進め、そしてこの戦いを終わりへと導く力となるのだろう。
その背中、たなびくマントを見つめているライトニング…しかし、その時ライトニングの胸の中に去来したひとつの、「予感」。

「フリオニール!」

思わず声を上げて、去ってゆこうとする彼を呼び止める。
その声に振り返ったフリオニールは不思議そうな顔でライトニングを見た。

「…どうした?」
「いや、なんでもない…なんでもないんだ」

ライトニングは首を横に振ってみせる。
頭の中に蛇のように鎌首をもたげた「予感」を振り払うように、そしてフリオニールに心配をかけないように。

「…それならいいんだが。じゃあ、気をつけて」

そう言って笑顔を浮かべて去っていくフリオニールの背中に向けて、ライトニングは呟いていた。
今度はフリオニールに聞こえないように。

「フリオニール…あの約束、本当に…守ってくれるな?」

そう。
去ってゆくフリオニールの背中を見つめていて、ライトニングは不意にそんな不安に襲われたのだ。
何故だろう、フリオニールはあの約束を―全ての記憶を取り戻した時にあの花を自分に譲るという約束を守ってくれないような、そんな気がして。
律儀で真面目な彼が自分の意思で約束を破ることなど、あるはずがない。
だって自分はフリオニールのそんなところに惹かれたのだから。自分の想いを根底から覆すようなことが起こるはずがない…その程度には、ライトニングは自分自身を、そしてフリオニールのことを信じている。
こんなものは予感でもなんでもない、ただ色々と不安に思っているところで思いついたただの「最悪の想像」だとライトニングは自分に言い聞かせて…もうすぐ見えなくなるフリオニールの背中を見送っていた。
自分も行かなければ、ヴァンとラグナが待っているだろう。
この戦いを終わらせなければ、そしてなんとしてもフリオニールには約束を守ってもらって…そして、この想いを彼に伝えるのだと自分に言い聞かせて。
そして自分自身を促すようにライトニングはひとつ頷いて、そして…フリオニールが歩いていったのと反対の方向へと歩みを進めた。


―結果として、ライトニングのこの「予感」は当たることになる。

しかし、フリオニールは約束を「守らない」のではない―「守りたかったのに守れない」のだと言うことを。
そして、守れなくなってしまったのは他ならぬライトニングの選択が理由だということを…今の彼女は、まだ知らない。


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