助言-1/3-






「これ、フリオニールのだったよな。悪りぃ、ずっと借りっぱなしになってた」

自分を呼びに来たジタンはそう言ってポケットからアクセサリを取り出す…確かにそれはショップで買ってから暫くの間自分しか使っていなかったもので、フリオニール自身は共用だと思っていたが仲間たちにはいつの間にか「フリオニールのもの」であると認識されていたらしい。

「ああ、別によかったのに。俺一人で使うつもりだったものでもないし」
「けど、ずっとフリオニールが使ってたんだからお前が持ってろって。多分皆使いたくなったらフリオニールを探しに行くだろうから」

ジタンはそう言ってにぃっと笑いを浮かべ、そこまで言うのなら断る理由もないとフリオニールは差し出されたアクセサリを受け取った。
受け取ったものをポケットに仕舞いこんだところで、ジタンがじっと自分を見上げているのに気付く―まだ何か用があるのかと、フリオニールはそちらに視線を戻した。

「あ、そうだ。折角だから聞きたい事があるんだけどさ」
「何の話だ?」
「まあまあ、こんなとこじゃナンだから」

ジタンは楽しそうに笑いながら、聖域の中でも人の少ないあたりに向けて歩き出す。
何の話だかまったく想像は出来ないが、ジタンの様子から悪い話と言うわけでもなさそうなのでフリオニールは素直にその後に続いた。
そして、やがて人気が途絶えたところでジタンは先ほどまでと同様に楽しそうな笑顔を湛えたままくるりと振り返った。

「…で、まあ聞きたいことってのはだ。単刀直入に言うけど、こないだの話」
「こないだの?」
「ほら、セシル達と一緒にメシ食ってたときの。何かが気になって仕方ない、って言う」

そう言えばあの話をした時ジタンもいたな、と思いながらフリオニールはああ、と曖昧に相槌を返す。
その相槌を聞いたジタンは一瞬だけ間をおいて、そして人差し指をフリオニールに向かって突きつける。表情は相変わらず笑顔のままで。

「あれ、ライトのことだろ?」
「え…はぁ!?」

言われた言葉を理解するのに一瞬を要し、そしてその言葉がはっきりと図星を指していたのでフリオニールの声はつい大きくなってしまう。
その様子すらもおかしくて仕方ないのか、ジタンの表情から笑みが消えることもない。

「何で分かったんだ、って顔してんな」
「え、いやだってそりゃあ…」

ジタンはそう言うが今自分は一体どんな顔をしているのかまったく想像がつかない。ただ、なんだか顔が妙に熱い。
自分の様子は余程滑稽なものなのだろうか、ジタンが耐え切れずに声を上げて笑い始める。

「わ、笑うなよ…それよりほんと、なんで…」
「…お前ほんっと分かりやすいな。とりあえず顔真っ赤だぞ」

笑いを堪えながらジタンはそう言って、フリオニールの視線の位置に来るように右手を掲げて見せた。


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