決心-3/3-






「だが…それならば私はどうすればいい?」

戦いを続けていく中でこの感情が邪魔になることは分かっている。それを分かった上で、自分の想いだけに正直に生きればいいといわれているのだろうか?
そんなことはない。自分は自分になすべきことをするだけ。そして今の自分は…調和の神の戦士だ。
心の中でだけ自分にそう言い聞かせた時に、ライトニングは気がついた。
自分を苦しめる感情の正体、それは…戦士としての立場とひとりの女としての想いの板ばさみになっているからだということに。
だが、今の自分にどちらかを斬り捨てることは出来るだろうか―答えは、否。
この世界にいる限り自分はコスモスに仕える戦士でなければならない、だがだからといってその役目の妨げになるからとフリオニールへの想いを全て捨てることが出来るかといえばそれも出来ず。

「…決めた」

気付いてしまえば答えが出るのは早い。
と言うよりは、一度決めていた答えではあったのだ。ただ、自分のフリオニールへの想いが自分が思っていた以上に深かったが為に迷いが生じただけのことで。
ライトニングは一度立ち去ったラグナの元へと再び脚を向けた…丁度いい具合に、彼にしては珍しくそのときラグナはその場にひとりきりで銃器の手入れなどを行っている最中だった。

「ラグナ。私は決めた」
「って。唐突に何だ?」

いきなり声をかけられて、それがただの短い言葉だったものだから言われたラグナの方が面食らう。
しかしそんなラグナの様子を気にするでもなく、ライトニングははっきりと言い放った。
それは…目の前のラグナに向けられているようで、それでいて…ライトニング自身に向けられた言葉。

「私は調和の神の戦士だ。だからこの戦いを終わらせる、それが先決だ。だが…この戦いが終わった時は私は調和の神の戦士ではなくひとりの女に戻る。そもそもそのつもりだったがその決意が強くなった」
「…そか、やっぱりとぼけてるだけだったか」

ラグナの言葉に答えず、ライトニングはそのまま踵を返して歩き始め…そして、振り返った。

「お前がどこまで気付いているのかは敢えては聞かないが、口外は無用だ」
「分かってるよ。オレはそこまで野暮じゃない」

銃口についたほこりをふぅっと吹いて払ってから、ラグナはライトニングの背中を見送る。

「いやー、若いっていいなぁ」

ラグナのその呟きはライトニングの耳に届くことはなく―
ライトニングは再び聖域の空を見上げる。

終わらせる。この戦いを一刻も早く終わらせて、そして…元の世界に還る前に、フリオニールと離れる前に…この想いを全て言葉にしてぶつける。
そのときフリオニールはどんな顔をするだろうか?
きっと慌てるだろう。もしかしたら聞き間違えたとでも思うのかもしれない。なんせ、鈍いからな。
そんなことを想像して、ライトニングには自然と笑顔が浮かぶ。

―だからこそ早く、この戦いを終わらせなければ。取り返しがつかないことになる前に、この戦いを終わらせる―

ライトニングの、握り締めた右手の中に秘められた誓いは…ライトニングにこの戦いへ向かう力を与えてくれるようで。
ともすれば秩序の神よりも今はもっと、フリオニールの方がライトニングにとっては力の源となりうるのかもしれなかった。


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