決心-2/3-
元いた世界の記憶がない今のライトニングは誰かをこんな風に愛することなどこれが初めてで…どうしたらいいのかさえ分からない、それが今のライトニングの本心。
どうしたらいいかは分からないが、どうしたいのかだけははっきりとしている…そんな状態で。
「どうしたいのか」と言う一番正直な気持ちに従ってライトニングは更に脚を進めた。
目指す先は、先ほど話し合っていたスコールとは一旦離れたらしいフリオニールの隣―
「ん?どうした、ライト」
すっかり落ち込んでいた気分も晴れたのか、今のフリオニールはいつもの…強さと純粋さを併せ持った瞳をライトニングに向けてくる。
「いや、どうもしない…が、その」
「昼のことなら謝ってくれたから…俺はそれで充分だよ。あんまり君に気にし過ぎられるのも申し訳ないし…」
お前が気にならなくても私が気になるんだ、それも昼間のことじゃなくてお前のことが。
何がしたいとか何か用があるとかそう言うことじゃなくてただ、声が聞きたかったんだ。
言わないと決めた以上その言葉を口にすることは出来ないしするつもりもない。ただ心の中だけでそんな本心を吐露しながら小さく首を横に振ってみる。
「お前がもういいと言うなら気にしないようにはする」
「ああ。俺もライトに心配かけないようにするから」
「おーい、フリオニール」
遠くからジタンの呼ぶ声、フリオニールはそちらに顔を向ける。そして、一度ライトニングの方へ視線を移す。
「私は特に用があるわけじゃない、ジタンのところに行ってやれ」
「ああ…じゃあ、また」
短くそう言い残してフリオニールは早足でジタンの方へと向かう。
呼び止めたいなんて、子供じみた考えが全く浮かばなかったといえば嘘になる―が、しかし。
それを口にすれば、この胸の想いを隠し通すことができなくなってしまう…
「難しいものだな」
「何が?」
後ろから声をかけられてライトニングは慌ててそちらを振り返る―そこに立っていたのは、ラグナ。
「…ラグナには関係ないだろう」
「ま、関係ないと言われたらそうかもしれないけどさ」
ラグナは腕を組み、そしてライトニングの肩を軽く叩いた。
「この話、こないだスコールにもしたんだけどさ…ものすごく好きな人がいてもいつか別れは来るんだ。ゆっくり言葉並べて別れられるとは限らない」
「…それがどうした」
「だから、さっき言っただろ?後悔すんなよ。なんとなく想像つくからさ、自分の気持ちに蓋をし続けた結果ほんとに取り返しがつかなくなってから苦しむライトの姿が」
「趣味の悪いものを想像するな」
今これ以上ラグナと話し続けることはライトニングには耐えられなくて…足早にその場を去る。
何故、普段はあれだけ間の抜けたことをやらかしているというのにこういうときだけ鋭く状況に気付くのだろうか、ラグナは。
年の功なのか、それとも…これがラグナの本質なのか?
ぶんぶんと頭を振り、ラグナの言葉を頭から追い出そうとする―しかし、心のどこかに引っかかって仕方がない、その…重みのある言葉。
―想像つくからさ、自分の気持ちに蓋をし続けた結果ほんとに取り返しがつかなくなってから苦しむライトの姿が。