落胆-2/3-






ライトニングがあんな冷ややかな態度だったのは、自分に対して失望したからではないのか。
その考えは、ここまでの経緯やライトニングの言葉を考えればあまりにも自然で、筋の通った考えで…だからこそ、強い説得力を持ってフリオニールの心にのしかかる。
無論、他の仲間に失望される事だってきっとこの戦いの中では苦しいことなのだろう。
神の元に集い、その意の元に戦う。そんな中で信頼関係が大切なのは自明の理で、そこで仲間に失望されるなどと言うことも勿論あってはいけない。
だが、他の仲間であれば逆に信頼を取り戻す好機と出来たかもしれない―だが。
ライトニングに失望されたとして、仲間としての信頼すら失ってしまったとしたら―?

「おーい、フリオニール?」

自分の目の前でひらひらと手を振ってみせるヴァンに、フリオニールの意識はそちらへ戻る。

「どうしたんだ、ぼーっとして」
「あ、いや…なんでもないんだ」
「ふーん。…ま、もしかしたらまだ傷の影響でぼんやりしてるのかもしれないから今日は無理するなよ。なるべくコスモスの近くにいたほうがいいぞ」

言いたいことだけ言い残して、ヴァンはフリオニールの近くから立ち去る。
先ほどと同じようにびゅうと風が吹いてフリオニールの頬を掠めた。
その風にすらからかわれているような、そんな気がして…フリオニールは唇を噛み締めてただただ項垂れることしかできなかった。


―さて、今日一日で一体何人から「どうした」だの「何があった」だの聞かれるんだろうか。
余程今のフリオニールの様子はおかしく見えるらしい、皆今のフリオニールの顔を見ると一様に同じような言葉を投げかけてくる。
お前みたいな単純なヤツがごちゃごちゃ悩むと一番面倒くせえんだよな、などとジェクトが言ってお前に言われたくはないだろうなんてカインが諌めて、違いねえやとジェクトが馬鹿笑い。
それに釣られてバッツやジタン、ヴァンやラグナも一緒になって大笑い。
そんな、普段であれば暖かく優しく思える仲間達のやり取りすらフリオニールの心の上っ面だけを滑ってすぐに流れ去ってゆく。
他の仲間の暖かさが今は余計に辛い。
まるで氷刃のようにすら感じられたあの時のライトニングの言葉はフリオニールの心をどんどん抉って深い傷をつける。
この深い傷の原因は解っている。自分でももう目を逸らすことが出来ないくらい自分は…

「…フリオニール」

そう、ライトニングに嫌われるのを恐れている…
そこではたと意識が戻り、目の前に立っているライトニングの姿を認めるとフリオニールはその場から一歩後ずさった。

「ら…ライト」
「話がある。ちょっと付き合え」

そうして視線だけで人のいなさそうな方を差し、そちらに向かって歩き始めるライトニング。
正直に言えば、その話を聞くのが怖かった。
それはもしかしたらようやく認めざるを得ないと腹をくくったライトニングへの恋が一瞬にして終わる瞬間かもしれない…から。


歩幅の違いを考慮しているのだろうか早足で歩くライトニングに、未だどこか影を引きずったまま追いつくのがやっとのフリオニール…
ふたりがたどり着いたのは、聖域から程近い海辺だった。
波打ち際まで足を進めたライトニングだったが、唐突に立ち止まってくるりと振り返り…ぼんやりと歩いていたフリオニールはライトニングにぶつかりそうになって少しよろめく。

「ぼーっとしすぎだろう…まあいい。私はお前に謝らなければいけない」
「…謝る?俺に?」

失望したとはっきり言われるとばかり思っていたフリオニールはライトニングの言葉に面食らう。

「ああ。今日のお前の様子がおかしかったのは…昼間に私が言ったことが原因なんだろう?」
「そんなことは…別に」
「お前は嘘が下手だな…全部顔に出ている」

視線だけをフリオニールの方に送ったままライトニングは海の方へと再び向き直る。
そして残った視線すらもフリオニールから外し、言葉を繋ぐ―先ほどの冷たい声色とは全く違う優しさを帯びた声で、ライトニングの言葉が響き始める。


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