永遠なんてなくても-3/3-






「うん、俺もそう思うんだ。俺たちにとってはそれはどうしようもない事実だからさ。でも…クラウドからそのことを聞いたときに俺、今改めてライトに言わなきゃいけないって思って」

そう言いながらフリオニールの手がライトニングの左手を取る。その所作はどこか恭しくすら感じて、普段のフリオニールらしくなくて…それでも茶化すのは躊躇われて、ライトニングはただフリオニールを見つめていた。
フリオニールの視線はライトニングの左手へと落とされている。丁度その視線が向かう先は、薬指に輝く指輪―そのことにライトニングが気づいたのと、フリオニールのその次の言葉が出たのがほぼ同時。

「嘘になる約束はもういらない…って、思ってる。だから嘘にならない言葉しか伝えられないけど」

そうこうしているうちにフリオニールはライトニングの左手を緩やかな動作で引き寄せ、その薬指に…嵌められた指輪の上からそっと口付けた。
どこかくすぐったいその感触―でも、唇を離し顔を上げたフリオニールの、いつも以上に真面目な表情に…くすぐったいと声に出すことは躊躇われて。
やがて離された唇は一瞬だけ閉ざされ…そして、再び言葉をつむぎ始め―真っ直ぐな瞳がライトニングの心を射抜く。

「俺、この世界にいる間はライトを誰よりも幸せにしたいって思ってる。だから…俺と一緒にいて欲しい。元の世界に還るその日までは、ずっと」
「フリオニール」

放たれた言葉はまるで…自分たちにはかなわないと分かっている永遠を誓う言葉のようで。
自分を真剣に見据えるフリオニールの瞳は「嘘にならない言葉しか伝えられない」と言う言葉を何より証明するかのように真っ直ぐで…そこには偽りも虚構も存在しない。
一緒にいたいのは自分も同じ―それどころか、寧ろ。
ライトニングは一度目を閉じ、そして…フリオニールの左手を取った。丁度、先ほどフリオニールがそうしたように。
そのままその手を引き寄せ、やはりフリオニールがそうしたように薬指の指輪の上からその手の甲に口付けた。

「…ライト…」
「私は元よりお前から離れるつもりはないし、それに」

言葉を切って目を開いたライトニングの視界に映るのは、その言葉を待って真っ直ぐに自分を見つめるフリオニールの瞳。
真剣な眼差しが互いの姿を捉えあう。ライトニングの指先は自然と、フリオニールの左手の薬指に光る指輪をなぞっていた。

「…お前が私を幸せにするというのなら、私だって―誰よりもお前を幸せにしてみせる」

そして、握り合った手を解きライトニングの手はフリオニールの胸元に添えられる。
ライトニングが待つものを悟ったのか、フリオニールはそっと身をかがめ…それに呼応したかのようにライトニングは瞳を閉じた。
触れ合った唇のぬくもりが、ふたりの心にあたたかな想いを宿す。
永遠なんてここにはないけれど、それでも―少しでも永遠に近くあるように。
それまでの間は共に歩んでいくと、互いを幸せにするという言葉を誓い合うかのように交わされた口付けはいつもよりも強くふたりの心を繋いでいるようにすら思えて―
ようやく唇が離れた時、それまで真剣だったふたりの表情にかすかな照れ笑いが浮かぶ。
そのまま、ライトニングの身体を引き寄せるかのようにフリオニールの腕がライトニングの背中に回った。

「愛してるよ、ライト」
「分かっている…私だってフリオニールのことを愛しているからな」

交し合った言葉だけで、永遠なんて要らないと思える―終わりのない愛など望めないことは自分たちでも充分良く分かっているから、だから。
いつか終わると分かっていても今はただこうして一緒に歩んで行ければ―互いが互いを幸せにしたいと想い合っていられれば、永遠なんてなくてもいいと…ライトニングはその想いを新たにしながらフリオニールのぬくもりを確かめるかのようにそっと目を閉じた。


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