永遠なんてなくても-1/3-






「あれ、ライト…指輪なんかしてたっけ?」

ある日の夕刻―その日は食事当番がライトニングで、少し難しい料理に挑戦すると言うことでティファの手を借りることにしていたのだが―急ごしらえのかまどに魔法で火を入れていたライトニングの左手を見て、ティファが不思議そうにそんなことを呟いた。
尋ねられた言葉にライトニングは自分の左手に視線を送り…思いついたようにああ、と短く言葉を返す。

「これか。…フリオニールからもらった」
「左手の薬指に、ね。それ、ちょっと意味深じゃない?」
「フリオニールの側にはそんなつもりは毛頭なかったがな。私が勝手にこの指につけただけに過ぎない」

ライトニングは無意識のうちに左手を柔らかく握り、薬指に輝く指輪に視線を落とす。
この指輪の名―エンゲージリング、それをセシルから聞いた時に他の指に付けることはもう考えられなくなっていた…そもそもサイズ的な問題で薬指にしかつけられなさそうではあったし。
そして、だからこそフリオニールにも同じものを贈ろうと思ったのだ。
…まあ、裏にもうひとつ理由があって…他の仲間とも共用したらいいなんて言いながら買ってきたくせにライトニングの薬指にしか嵌まらないサイズだ。いかに普段から剣を扱い若干他の女性よりは手が大きいとは言え男性陣が貸してくれとでも言い出したらどの指につけさせるつもりだったのだろうか。
だからフリオニールに合うサイズのものを―仲間の中でも割と大柄な部類に入るフリオニールに合うのであれば他の仲間もどこかしらの指にはつけられるだろうと選んだというのもあるのだが、不思議なことに誰も貸してくれと言わないあたり皆案外指輪の意味を察してくれているのかもしれない。
ぼんやりとそんなことを考えているライトニングの背後から、ティファの声が続く。丁度、何かを思い出したかのように。

「…そう言えば、フリオニールも左手の薬指に指輪してた気がするけどあれってもしかして…」
「恐らくお前の想像通りだろうな」

包丁を手に取り、どこから捕まえてきたのか魚を捌きながらライトニングは短くそう答える。
今自分も全く同じことを考えていたのだからティファが同じものを連想したのも無理はない。
まあ、フリオニールの右手には既に元の世界から持ってきたという指輪が嵌まっているので殆ど左手にしか指輪が出来ないのもまた事実。
別のアクセサリであっても、たいてい左手の中指か…サイズが小さいものであれば小指に嵌めることもあるようではあったが。
それに便乗して、左手の薬指の指輪の意味をあまりはっきり覚えていなかったらしいフリオニールの左手の薬指にすんなり指輪をさせることに成功したという裏話は…揃いの指輪になにやら夢を見ているらしい今ティファに語るべきではないだろう。

「でもそれ、なんかちょっと羨ましい…かも」
「拳で戦う人間が指輪なんかしたら邪魔で仕方ないだろう」

言ってしまった後で、今のはなかったな…とライトニングの中に小さな反省が生まれる。
この発言は流石に夢見るティファに告げるには冷たすぎる言葉だったような気がして―取り繕うように、ライトニングはすぐに言葉を繋げた。


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