瞬間を重ねて-4/4-






「出した…んだけどまだ、それが正しいのかどうか正直自分でも良く分からない」

フリオニールはそこで、握り締めたライトニングの手を離してその髪にそっと手を添える。
いつもの如くライトニングに触れるその手は暖かくて、優しくて…ライトニングの手はその手のぬくもりを追うかのように、髪に触れるフリオニールの手に再び手を重ねた。
ライトニングの行動に微かに笑みを浮かべながら、それでも真剣なままの眼差しでフリオニールははっきりと言葉を繋ぐ―

「元の世界に還るために戦う…それは揺るがない。でもそれなら元の世界に還るその瞬間まで、ほんの一瞬でも俺はこの世界にいられる時間を大切にしたいって思った」
「この世界にいられる時間を大切に…か」
「ああ…永遠にここにいられるわけじゃないなら、ここにいられる時間を少しでも大切にしようって思ったんだ。元の世界の仲間も大切だけど、それと同じくらいこの世界のみんなのことも大切だし…それに」

重ねられた手とライトニングの髪の間から手を引き抜き、フリオニールの手がライトニングの頬に添えられた。
ライトニングを捕らえる視線はいつものように優しくて、そして真っ直ぐで―

「この世界も元の世界も全部ひっくるめて、今の俺にとって一番大切だって思えるのはライトだから―ライトといられる時間を少しでも積み重ねて、大切にしたいんだ」
「…フリオニール」
「例えばそれがほんの一瞬だとしても、その一瞬を沢山集めて俺の中に沢山のライトを刻み付けたい…って言うのが、俺が出した結論」

真剣な眼差しにほんの少し照れの色が混じり、フリオニールの手がライトニングの頬から離れて再びライトニングの手をしっかりと握り締める。
その指の強さがライトニングの中の迷いを融かしていく―今はただ、この強さが愛しい。

「…お前には本当に…救われていると思うことも多い」

握り締められた手の強さを確かめるようにライトニングは目を閉じて小さな声でそう呟いた。
ぬくもりを、強さと優しさをを確かめながらライトニングの言葉は静かに続く。

「いつかお前が元の世界に還って、私じゃない誰かを愛したとしても…私のことを時々は思い出してくれるか?」
「当たり前じゃないか。初めてこんなに愛することができた人のことをそう簡単に忘れたりできないさ」
「ああ…そうだな。きっと、私も」

再び目を開けたライトニングの瞳に映るのは、フリオニールの…正直で真剣な眼差し。
今、この世界で自分が愛したのがフリオニールでよかったと心から思える真っ直ぐな強さを確かめるようにライトニングはその肩に身体を預けた。
いつか離れてしまうことは分かっている。同じ世界に還ることは絶対に叶わない。
それでも、たとえここに永遠がないとしても…フリオニールとならば永遠よりもずっとずっと重い「一瞬」を共に積み重ねていけると、ライトニングは確信していた。
そのライトニングの身体を、包み込むようにフリオニールの腕が抱きしめる―
フリオニールの鼓動を感じながら、ライトニングは再び目を閉じた。
こうして触れ合っていられる「一瞬」の記憶を、自分の中に刻み込むように。


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