瞬間を重ねて-1/4-






この世界に再び喚ばれてからどのくらいの時間が経っただろうか。
1ヶ月?それとも1年?
元の世界にいれば時の流れの標となるであろう季節の移り変わりはこの世界にはない。ただ、いつまで経っても荒れ果てた大地と薄暗く雲を纏った空があるばかり。
ただ、朝が来れば目を覚まし昼の間は戦いを続け、夜になれば眠る―その繰り返しの毎日で、一体どれほど時間が経ったのかなどもうはっきりと言えば全く分からない。
途中までは数えていたけど何の意味もない事が分かったからやめてしまった、なんて言っていたのは誰だったか…そしてその気持ちは分かるだけに何も言えなかった様な記憶だけが鮮やかに残っている。
この戦いは永遠に続くのではないかと思うこともある―だが、もしも永遠に続くのだとしたら…
浮かぶ考えを誰かに話してしまえば咎められるような気がして誰にも言えないまま、それでもその考えに捕らわれたまま―ライトニングは今日もまたうっすらと雲に覆われた空を見つめていた。

「…あれ、ライト。こんなところで何してるの?」

声をかけてきたセシルが不思議そうなのも無理はないだろう―何せ切りたった崖の上に腰掛けて空を見ているのだから。
ひとりで考えたかったから誰も来なさそうな場所を選んだのだが、逆に何故セシルはここにいるのだろうか。
切り立っているとは言え高さはオニオンナイト2人分、といったところだろうか。
この程度の高さであれば、普段戦いの中で宙を舞ったり大地に叩き付けられたりしている彼らであれば誤って落下しても特に深い傷は負わなくて済みそうではあったが。
振り返れば声をかけてきたセシルの方は薪になりそうな木の枝などを抱えている―その最中、山道を登ってきてライトニングの姿を見つけた―といったところだろうか。
そのセシルの顔を見て、ライトニングはふと思いついたかのようにそのセシルの目を真っ直ぐ見据えて言葉を放つ。

「…セシルはやっぱり元の世界に帰りたい、だろうな」
「それはまぁ…元の世界では一緒にいられない兄さんやカインが近くにいるって言うのは悪くないけど、やっぱり国のみんなや家族のことは心配だからね」
「ああ、そう言えばお前は国王様で、しかも結婚してたんだったな」

そんな話を前に聞いたことがあったな、と思い出しながらライトニングが言うとセシルはひとつ頷いた。
この物腰穏やかな青年が統治する国であればさぞ平和なことだろう、などと余計なことを考えながらライトニングはセシルの方を見上げている。

「でもどうしたの、急にそんなことを聞いて」
「いや、なんでもない」

今自分が思っていることを、元の世界へ帰りたいという希望を持っている仲間に告げるのはなんだか躊躇われてライトニングは言葉を濁して再び空へと視線を移す―
背後で一瞬だけセシルの足音が聞こえたが、その足音はすぐに止まった。
そして耳に届くのは―いつもの、セシルの穏やかな声。

「…多分、なんだけど。この前フリオニールが言ってたことがきっと、今ライトが考えてるのと同じことだと思う」
「フリオニールが?」

聞こえた名前に再び振り返ると、セシルは小さく頷いて…そして薪を抱え直す。
そのままライトニングの方へといつもの柔らかな笑顔を向けて、小さく首を傾けてみせた。

「だからもしも今考えていることでライトが悩んでるなら、フリオニールに話してみたらいいんじゃないかな…同じことを考えているならそれで答えが見つかるかもしれないし、違ったとしてもきっと真剣に聞いてくれるよ」
「セシルお前…お節介だと言われることはないか?」
「うん、よく言われる」

冗談っぽくくすっと笑みを浮かべたセシルはそのまま小さくライトニングに手を振って歩き始めた。


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