刻まれたのは罪でなく-2/3-






「ありゃ止めても無駄、かな」
「どうして俺たちの仲間にはああいうのが多いんだ」
「…『ああいうの』に含まれてる自覚があるから俺はなんとも言えないけどな、その辺」

その背を見送るラグナとクラウド、それにフリオニールはそんなことを言い合っている。
ウォーリアオブライトは無言のままそのプリッシュの背中を見送っていた…その表情は特に普段と変わることはない。無論、それが彼らしさなのかもしれなかったが。
イミテーションに向かって走っていったプリッシュは軽快なフットワークで攻撃を繋ぎ、イミテーションを着実に弱らせてゆく。
しかし相手の力が彼女のそれを超えている以上簡単な戦いで終わるわけはなく…一瞬の隙に叩き込まれただけの攻撃でもその身体に受ける傷は大きいもので。
褐色の肌に次第に血が滲み、打撲の跡も見られるようになってくる―
それでもどうにかプリッシュが勝利を収めたのはきっと、彼女自身の高い身体能力の賜物だろう。
傷つきよろめきながら一行の元に戻ってきたプリッシュを、ウォーリアオブライトが出迎える。

「…無理をしすぎだ。大体、私たちはまだ」
「考える時間がもったいないっつっただろ。それに勝ったんだからいいじゃねえか。傷も大したことねえしさ」

そうは言いつつも、時折痛てて、等と言いながら身体をさするプリッシュにウォーリアオブライトは溜め息をついた。

「私が言っているのはそう言うことではなくてだな…まあいい、暫く後ろで休んでいるんだ」
「へいへい」

言われるがままに列の最後尾にやってきたプリッシュを、それまで最後尾にいたフリオニールが出迎える。
それと入れ替わるように、次に迫るイミテーションへ向かい…さっきの話し合いの最中で、ラグナが相手するのがいいだろうと話がまとまっていたのでその通りにラグナが一歩脚を踏み出していた。

「本当に大丈夫なのか?」
「あいつにはああは言ったけど実はちょっとキツい」

へへっ、と笑いを浮かべたプリッシュをフリオニールは心配そうに見遣るが、そんな心配は無用とばかりにプリッシュはフリオニールの背中を叩いた。

「けど、あいつにはこれ内緒な」
「…だけど」
「あいつに弱いとこ見せたくねえんだよ」

そう呟いたプリッシュの笑顔がどこか、先ほどまでとは違ったものに変わる。
どこか、何かを懐かしむような…そしてプリッシュがその視線の先に捕らえているのは、今度はラグナを見遣っているウォーリアオブライトの背中。

「あいつを『こっち側』に引き込んだのは俺だからさ。その辺あいつは覚えてねえだろうけど、俺があいつに弱いとこ見せてたんじゃ話にならねえだろ」
「…そうか、あの人の『過去』を知っているんだったな」
「あいつはまるっきり覚えてねえけどな」

冗談めかしてそう言うプリッシュの視線と同じように、フリオニールもまたウォーリアオブライトの背中を視線で追っている。
ラグナはなかなか上手く立ち回っているようで、もう間もなく彼の目の前にいるイミテーションを撃破することが出来るだろう。その様子を見てどこか安心しているようにも見える。

「それでも、あいつはあの頃に比べたら随分強くなったみてぇだからさ。俺としても安心してんだよ、ちゃんと…覚えてなくても俺の言ったこと、意識のどっかに残してんだなって」
「意識のどこかに…か」

ふと…かつての戦いでがむしゃらに夢を追っていた頃の自分を思い出してフリオニールは視線を上方に送った。
過去の戦いの事など覚えていなかったはずなのに何故か懐かしかった、ライトニングを模ったイミテーション―ライトニングのことは思い出せていなかったのに、意識のどこかにそれを残していたのだろうか。


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