刻まれたのは罪でなく-1/3-






「よっ」

解放するべきひずみに向かう彼らを手を上げて出迎えたのは…既に何度か顔を合わせた事のある戦士。
以前に会ったときにプリッシュと名乗った彼女は、自分たちが召喚されるよりも遥か以前の戦いの際にコスモスに仕えていたということだった。
…彼女自身は既に消滅を迎えたはずだと自分では語っている、だが…しかし。

「まあ、なんでだかよくわかんねーけど俺もこっちに帰って来たみたいだしさ。折角だからお前らの手助けしてやるよ」

当たり前のようにそんなことを言って、時折現れては本当に自分たちの手助けをしてそしてまたいずこかへと帰っていく。
彼女が普段どこにいて何をしているのかを知っているものは誰もいない…が、それでも彼女の助力が時にありがたいのは事実。
手助けするという申し出をその度に受け容れて、力を借りながらどこかへと帰るプリッシュを見送る―
その繰り返しの中で、一行は彼女もまた自分たちの仲間であると認識するようになっていた。

「本当に君は神出鬼没だな」

そんなプリッシュの姿を見て取ったウォーリアオブライトがぽつりと呟く…プリッシュと共に戦ったことがあるのは、プリッシュ曰くウォーリアオブライトひとりということだった。
他に共に戦っていたものたちは既に消滅を迎えているし、その中で戻ってきたのは自分だけだと以前に言っていたことがある。
しかしながらウォーリアオブライトもその時の記憶は一切残していない…自分たちがその話を聞いたのも、過去の戦いの記憶の記憶を多少なりとも残していたプリッシュからだった。

「まあまあ、気にすんなよ。で?今日は俺何したらいいんだ?」
「今日はここから少し北にあるひずみの解放に向かうつもりなのだが、同行してもらって良いだろうか」
「ああ、俺にまっかせとけ」

そう言ってにぃっとウォーリアオブライトに笑いかけ、プリッシュはひとつ胸を叩いた。
その姿を頼もしいと思えるようになっていたのは、そこに―他の仲間達に対するものと同様の確かな信頼が生まれていたからだろうか。
とまれ、プリッシュを伴って一行はひずみに向かう。
今日ひずみに入るのはウォーリアオブライトとフリオニール、それにクラウドとラグナ…それとプリッシュ。
そもそもはティファが行くつもりだったようだが、何か思うところがあるのかプリッシュが参加するのなら代わりに自分が残ると言い出したのでそれをウォーリアオブライトが受け容れた形になる。
気をつけて、と送り出す仲間達の声に力強く…ラグナとプリッシュは笑って、あとの3人は真面目な表情で頷いてから先へと進む。

その日入ったひずみの中には、数は多くないものの明らかに自分たちよりも大きな力を持ったイミテーションが多数いる。

「誰かがひとりで全部片付けるのは難しそうな感じだけど、どーすんだ?」
「…ふむ。見たところこのひずみを解放する為に必ず倒さなければならないのは5体と言ったところか…いずれも厳しい戦いになりそうではあるが」
「それなら1人が1つ相手すればいいだろう」
「じゃあ、敵の装備や想定される戦い方なんかを見て誰がどいつを相手するか考えようか」

プリッシュを除いた4人がそんなことを真面目に話し合っている。
その間、プリッシュは退屈そうにうろうろと辺りを歩き回っていたがそこから一番近くにいたイミテーションに向かって駆け寄っていく。

「考えてる時間がもったいねえだろ!とりあえず、そこにいるのは俺に任せとけ!」
「あっ、おい」

止めるようにフリオニールがそう声をかけたもののプリッシュは聞いてはいない。
そのままひとり、イミテーションの方へ向かって突撃していった…


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